今月1日に就任した柔道男子代表の鈴木桂治監督(41)が、24年パリ五輪に向けて危機感を募らせた。

初陣のグランドスラム・パリ大会を終えて19日に帰国。全7階級で4階級を制したが、「最重要課題」である重量級は惨敗した。100キロ級、100キロ超級の3選手はまさかの初戦の2回戦敗退。世界との差を突きつけられた形となった。鈴木監督は「良い選手と良くない選手がはっきりした。重量級については世界で勝つテーマは遠いと改めて実感した。非常に厳しい」と、険しい表情で振り返った。

今大会は東京五輪直後でもあり、日本を含めた各国の大半の五輪メダリストは不参加。2、3番手中心の参加で10代の若手も多く、その分「ワンチャンスをものにしてほしい」と結果を求めた。コロナ禍の影響で実戦も少なく、特に重量級は国内で限られた相手としか稽古できない環境的な問題もある。しかし、それ以上に試合内容を見て「つめた稽古ができていない。国内の稽古で自己満足になっているのでは」と厳しく指摘した。

根本的な意識改革と海外での経験値を上げることを急務とし、社会情勢を踏まえた上で積極的に海外派遣する考えを示した。自身が重量級コーチを務めていた13年には、16年リオデジャネイロ五輪100キロ級銅メダルの羽賀龍之介(旭化成)をモンゴルに単身武者修行させたこともあり、同様に有望な若手を海外武者修行や国際合宿に参加させる可能性もある。

今大会はパリ五輪の会場でもあるアコーホテルズアリーナで、満員の観客の声援を耳にしながら、あえてコーチ席に座らずに俯瞰(ふかん)して試合を見たという。東京五輪男女混合団体で金メダルを獲得した柔道大国フランスのアウェーの空気を感じながら、3年後の本番を想定し、海外勢の若手の成長を目の当たりにした。

指導する上で「失敗しても同じ過ちを繰り返さない」という信念を持つ41歳の指揮官。「強化」と「結果」という重圧と戦いながら次なる一手を模索する。【峯岸佑樹】