ラグビーの関西リーグを23年ぶりに制した京都産業大が、初の大学日本一を目指す戦いに挑む。大学選手権は準々決勝からの登場で、26日に日大(関東リーグ戦2位)と対戦(埼玉・熊谷)する。今季からOBで元日本代表SOの広瀬佳司監督(48)が就任。伝統の“ひたむきさ”を継承しつつ、組織的な守備を構築。大学屈指のFW第3列を擁し、一体感ある「負けないチーム」が完成した。悲願の初優勝へ-。新生京産大が航海に乗り出す。

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四半世紀前の光景がよみがえった。かつて京産大ラグビー部の練習場は今の大学に隣接する人工芝ではなく、鴨川の上流にある土のグラウンドだった。厳しい練習は有名で、それが終わると1人、黙々とキックを蹴り続ける選手がいた。1990年代の半ば。プレースキックを100本以上。どんなに疲れていても毎日、続けていた。キックの職人となり、在学中に日本代表に選出される。それが広瀬監督の学生時代だった。

今季、FB竹下拓己(3年=東福岡)が同じように孤独な特訓をするようになった。ボールを拾うのは広瀬監督。その光景に刺激を受けるように1人、また1人と居残り練習をする選手が増えていく。90年代の京産大ラグビーとは、選手を震え上がらせるほどの練習量で、大学日本一は手の届くところにあった。今年は23年ぶりに関西リーグを制覇。広瀬流の理論を加え強い京産大が復活した。

広瀬監督 大学時代の経験が自分の礎としてあります。厳しい練習をこなしながら関西制覇を目指し、国立に行くんだと。2つ上に吉田明さん(元日本代表CTB)がいて、2つ下に大畑(元日本代表WTB)が入ってきて。早稲田に勝って。強かったですし、ラグビーは楽しかったです。

組織的な守備が、躍進につながった。広瀬監督の意向で、今季から元日本代表CTBとして79キャップを持つ元木由記雄GM(50)が直接指導にあたる。昨季までは選手勧誘などグラウンド外の仕事が主だったが、同GMが守備、広瀬監督が攻撃と分業制にすることでより具体的な戦術を実践できるようになった。SO家村健太(3年=流通経大柏)は「根性論ではなく、ポジショニングの早さとコミュニケーションを徹底するように言われています。組織で守備ができているので、1発で抜かれることはなくなりました」と話す。

準々決勝日大戦(26日)を突破すれば、準決勝(1月2日、国立)は関東対抗戦1位帝京大-同志社大(関西4位)の勝者との対戦になる。

広瀬監督 自分たちがこれまでやってきたことを理解して、信じることができれば上位にいける。スポーツはDNAや文化を持っているチームは強い。(京産大に)文化はある。まだ日本一にはなっていないですけれど、文化を壊さないことが一番大事。これまで通り必死に勝利を目指す中で醸し出される“ひたむきさ”。これが受け継がれる文化であり、47年間もかけて大西先生(元監督)が作り上げてきたものだと思う。

伝統的にFW戦には自信を持つ。プロップ平野叶翔主将(4年=西陵)らFW第1列は安定感があり、フナキ・ソロモネ(1年=目黒学院)とアサエリ・ラウシー(3年=日本航空石川)の両ロックは強力。福西隼杜(3年=報徳学園)、三木皓正(2年=京都成章)、藤井颯(4年=京都成章)らFW第3列は大学屈指だ。バックスはSO家村に、キックに自信をつけるFB竹下、決定力のあるWTB船曳涼太(2年=神戸科学技術)らを擁する。

前回大会は天理大が関西勢として36大会ぶりに大学日本一に立った。リーグ戦はその天理大を撃破し全勝優勝。SO家村は「チームとして目指すのは、もちろん大学日本一です」と目を輝かせる。

打倒関東、その先にある関西勢として連覇へ。京産大がまだ見ぬ頂点へと突き進む。【益子浩一】

◆京産大ラグビー部 1964年(昭39)に同好会として発足。関西3部リーグに所属した73年に、天理大コーチだった大西健監督が就任。3季目の74年に1部昇格を決める。関西リーグは90年に初制覇し優勝5回。全国大学選手権は計7度進出した4強が最高成績。19年度に退任するまで大西監督は、シーズン中に身銭を切って毎日選手にちゃんこ鍋を食べさせる「栄養合宿」を伝統とした。プロップ田倉、SO広瀬、WTB大畑、CTB吉田、SH田中ら多くの日本代表を輩出。大学日本一とともに「社会で通用する人材を育成する」(広瀬監督)ことを目指す。