夏輝のスピードは、通用します! Wリーグ・アランマーレ秋田・砂川夏輝(26)が今日26、27日、新潟・阿賀野市内での新潟戦に臨む。参入初年度の今季は副主将を務め、プレーと姿勢でチームをけん引したが、これまで紆余(うよ)曲折のバスケット人生を歩んできた。西原高で3年間指導した未来沖縄・渡慶次(とけし)茂監督(66)が約11年の思い出を振り返り、残り2試合と来季の飛躍を願って思いを語った。【取材・構成=相沢孔志】
思い出が、瞬時に浮かんできた。渡慶次監督は「久しぶりにバスケットの話をしたから、しゃべりが止まらなくて」と満面に笑みを浮かべた。指導者歴は37年。西原高などで全国を経験し、教え子を何人もWリーグに輩出した。本年度からは新設校の未来沖縄を指揮し、創部1年目で1年生15人のチームを県新人3位に導いた。沖縄を代表する名将は砂川をこう評価する。
渡慶次監督 僕が見てきた選手の中では、瞬間のスピードはピカイチ。(37年間で)NO・1だと思いますね。
11年4月。向上心を胸にひとりの中学生が西原に入学した。小学3年から競技を始め中学では大きな結果を残せなかったが、自分を信じ強豪の門をたたいた。
渡慶次監督 中学生の時からスピードがあるという自信はあったと思います。でも、中学では結果を残せなくて。僕が引っ張ったわけではなく、自分から強いところでやりたいということで西原に来たんですよ。
高校時代はポイントガード。12年12月、全国選手権で3年生が引退し、新チームでは主将に任命した。
渡慶次監督 夏輝はとても真面目です。自分が「こうだ!」と思ったら、信念を曲げないで1つのことを一生懸命頑張るプレーヤーです。チームもよくまとめてくれました。日頃はとてもおとなしかったですけどね。学校では先生方の評判も良かったです。
同年の県新人は3位。1月の小橋川杯では優勝し、九州大会に出場した。だが、集大成となる最終学年の全国高校総体と同選手権は県予選で敗退。届かなかった全国。悔しくても、人前では涙を見せなかった。
渡慶次監督 内に秘めた闘志はあるんだけども、人前で涙を流すとかはあまりなかった。悔しい思いは少し態度で見え隠れしましたけど、涙を流すくらいの姿勢は見せないようにしていましたね。
卒業後の進路は即決だったという。3年生進級前の13年3月。西原高近くの体育館で、早大を含む関東の強豪4大学と韓国、台湾の学生チームが強化試合を実施した。渡慶次監督が部員を引率して試合を観戦し、砂川から思いを伝えられた。「早稲田にいってバスケットがしたい」。当時は萩原美樹子氏(51=東京羽田ヘッドコーチ)が指揮し、全国優勝を狙う屈指の名門。その後、早大進学が決まり、厳しい環境に飛び込む砂川に向けて激励の言葉を贈った。
渡慶次監督 早稲田は日本一の大学。おそらく苦労するかもしれないけど、バスケットを好きであれば、後悔がないように4年間頑張りなさい。夏輝のスピードは大学でも通用するから。2軍や控えに回っても腐らないで、縁の下の力持ちになれるように。人間的にも成長するだろうし、その先(Wリーグ)が見えるかもしれないから。
舞台は沖縄から関東へ。2学年上には、日本代表で活躍する本橋菜子(28=東京羽田)らがおり「なかなかガードで使ってもらえる機会がなかった」。だが、シューティングガードとして起用されると同選手権は3年からメンバー入り。ただ、渡慶次監督は「ガードをしていかないとWリーグでも活躍はできないと、くぎを刺していた」。
早大卒業後の2年は、砂川にとってもどかしい時間だった。Wリーグでのプレーを夢見ていたが実現せず。だが、上の舞台をそう簡単には諦めることはできず、空港勤務をしながら社会人チームで競技を続けた。出場試合を観戦するなど、砂川の動向に注目してきた渡慶次監督が明かした。
渡慶次監督 「物足りない」ということで、電話が来たり、ラインが来たり。「実業団に今からでも行けないんですかね…」という話もあった。本人はもっとバスケットをやりたいけど、チャンスがなくて…。もう(Wリーグなどで)バスケットはできないのかなと悩んでいました。
一筋の光が見えたのは19年だった。茨城国体の沖縄成年女子にメンバー入り。コーチの元トヨタ自動車・久手堅笑美さん(37)から、Wリーグ参入を目指すアランマーレ秋田の存在を教えてもらい、すぐに動いた。20年4月、社会人リーグのアランマーレ秋田に入団。その1カ月後にWリーグ参入が決定した。
渡慶次監督 夏輝は真面目に一生懸命にやる選手なので(チームの)基礎作りまでは頑張ってくれるという思いがありました。試合に出られなくても一生懸命、人のためにやれる選手です。アランマーレも彼女を獲得して損することはないと思いました。
今季から大舞台のコートに立つ砂川は、Wリーグの試合を楽しみながら、攻守で存在感を見せている。渡慶次監督は映像でプレーを常に確認し、アドバイスを送っている。
渡慶次監督 彼女のポテンシャルからすれば、まだ伸びしろはある。スピードもあるし、シューティングガードは大学時代からなので。ボールハンドリングやドリブルを磨いて3ポイントシュート(3P)も入れられるようにできれば。ドリブルでは十字の動きを使って、縦に行けなければ後ろに引いたり、右、左にずれたり。緩急を使ったり。ドリブルワークが増えれば、彼女の1対1はもっと生きてくる。プレーの幅をもっと広げてほしいですね。
あっという間に駆け抜けたシーズン。残り2試合に臨む砂川へ、笑顔でエールを送った。
渡慶次監督 「もっと動いて積極的に3Pを打ちなさい!」と言いたいですね。(勝利した)東京羽田戦は3Pを打ったから(26)得点ができた。この間も3Pをもっと打てと連絡しましたよ(笑い)。落ちたとしても、チームの中心だから(ヘッドコーチの)小嶋(裕二三)さんは交代しないかもしれない。1度休ませてから、またすぐに出すはずだからと。試合に出ている時に経験をして(シュートが)入るようになればステップアップもできます。来シーズンにつなげるために、たくさん3Pを打って終わってほしいです。
夏輝はもっとできる。もっとやれる。さらなる活躍を期待して。
<砂川「チャンスは絶対に逃さない」>
悔いは残さない。アランマーレ秋田・砂川夏輝(26)は、西原高時代に3年間指導してくれた未来沖縄・渡慶次茂監督(66)のエールを聞き、新潟戦に向けて「チャンスは絶対に逃さないようにしたい。最後の試合になるが、楽しんでやっていきたい」と気持ちを高めた。
リーグ戦終盤に、仲間から最後を託された。19、20日のトヨタ紡織戦。第1戦に放ったシュートは10本に対し、同2戦は前日の反省を踏まえて積極的に打ち込み17本。その中で3点シュートは今季最多タイとなる9本を打った。1試合平均13・45得点はチーム最多で「みんなから『打ち続けていいよ』と言ってくれたのは、今までがあったからだと思う。チャンスがあったらしっかり打って決めきりたい」と意気込んだ。
新潟は1月16日のシャンソン化粧品戦以来、約1カ月ぶりの試合となる。砂川は「自分たちが相手の準備を上回れるようにやって、しっかり2勝したい」と気合十分だ。今季最後の2連戦。攻守ともに、最後まで走り続ける。


