日本オリンピック委員会(JOC)と全日本柔道連盟の会長を兼ねる1984年ロサンゼルス五輪(オリンピック)無差別級の金メダリスト山下泰裕氏(64)が12日、都内の講道館で記者団の取材に応じ、ウクライナに侵攻したロシアのウラジーミル・プーチン大統領(69)を「全くの別人」と突き放した。

前日11日に個人サイトでロシアのウクライナ侵攻を非難。個人の柔道家として「非人道的な行いの数々、柔道家であるプーチン大統領によるロシア軍の侵攻のニュースを聞くにつけ、心を痛めてきました」「柔道の精神、目的に完全に反するものです。全く容認することはできません」「愚かな行為が1日も早く止むことを願います」などのメッセージを英文併記で発信した。

この件に関する説明に立ち「(以前の姿からは)全く想像できない。大きく変わってしまった」。柔道を通じた親交のあったプーチン氏の来日時を振り返り「森(喜朗)総理との首脳会談後、この講道館に来られた時は心を打たれるような振る舞いだった。チェチェン共和国(の中学生)を招いた福岡のサニックス旗大会でも『柔道で励ましてくれてありがとう。心から御礼したい』と言われた。当時とは全くの別人。あのころとはイメージが違う。非常に残念だ」と批判した。

侵攻から間もなく50日になるタイミングでメッセージを出したことには、遅くなった実感があることを自ら口にした上で「私の専門は柔道、スポーツ、競技であり、プーチン大統領の侵攻を止めるメッセージを届けるルートもなかった。JOCや全柔連としても難民支援に重点を置いてきた。自分のかたくなさ、未熟さもあった」と釈明した。

続けて「しかしジェノサイドなど非人道的な報道の数々に、たとえ効果がなくても、メッセージを出すべきではないかと考えた。昔は、喜ぶ柔道のことであれば小さなメッセージでも届いた。今回のメッセージはプーチン大統領を不快に、場合によっては激怒させるかもしれないが、届いてくれればありがたい」と言葉に力を込めた。【木下淳】