赤土対応の大坂が誕生だ! 元世界女王で4大大会4度の優勝を誇る世界36位の大坂なおみ(24=フリー)が、今季自身初の赤土コートの初戦を快勝した。

相手は先週のイスタンブールで予選から勝ち上がり自身初のツアー優勝。今大会も予選2試合を勝ち上がり、赤土9連勝中の元ジュニア世界女王だった。しかし、勢いのある相手を前にして、大坂は見事な赤土への対応力を見せた。

赤土で戦う考え方に、大きな変化が生まれたようだ。「今年は1週間早く、赤土の準備を始めた」。早々と欧州入り。赤土最高峰の全仏で13度の優勝を誇るナダルの故郷、マヨルカで徹底的な練習を積んできた。ナダルからヒントを取り入れたと、赤土の帝王学も伝授されたようだ。

戦術も大きく変わった。まず1つ目は、リターンで構えるコート上での位置だ。今年3月のマイアミオープンまで戦ってきたハードコートでは、ベースラインの内側に入り、極端に、ネット寄りで構えた。相手のサーブに圧力を与え、弾んだ瞬間をとらえ、速攻で返球するのが目的だ。

しかし赤土はバウンドしてからの球足が遅く、早く返球しても追いつかれる。カウンターで逆襲を受ける場合も多く、大坂は、過去、この展開で、何度も失敗してきた。この日は相手の威力が落ちる第2サーブでもベースラインより後ろにリターンで位置。球速が落ちるところでしっかりととらえ、ミスを減らす返球に徹した。

2つ目は、ラリー戦の弾道だ。パワーを生かした得意の一発必中ショットは大坂の最大の武器だが、最大の弱点でもある。焦りすぎるとリスクを取り、凡ミスが生まれる。決まらないとイライラすることで、ミスは増加する。すべては回転が少ない直線的な球筋が持ち味だからだ。

この日は球に順回転をかけ、ネットより少し高めを飛ばし、山なりの球を何球も使用した。特に自分が追い込まれたときに体勢を立て直し、逃げるために、その順回転球を使い、不利だった展開を元に戻している。

球種を増やすのは、ラケットの握り方や振る方向が変わるため、簡単には身につかない。昔、大坂は「いまさら順回転の球を打てるわけでもない」と話したことがある。しかし、この日見せた球種は、あきらかに順回転が多く、事前に練習を行ってきた結果だろう。

次戦の同47位のソリベストルモ(スペイン)との対戦が、大坂の赤土対策の見せ場だ。相手は、赤土の専門家。対戦成績は大坂の2勝1敗だが、その1敗が悪夢だった。敵地の赤土で行われた20年2月の国別対抗戦日本-スペイン戦で、大坂は3ゲームしか奪えずに敗れた。

その前の全豪で連覇を狙ったが3回戦敗退。加えて、心の師と慕ったバスケットのコービー・ブライアントさんの事故死を引きずり、精神的にどん底の状態だった。試合中に泣きだし、女子代表の土橋登志久監督が、必死でなだめる状況だった。それ以来の対戦に、大坂の成長ぶりが試される。【吉松忠弘】

◆男子ATPツアーのマドリードオープンWOWOWオンデマンドで5月1日から8日まで配信される。