初出場の花車優(22=キッコーマン)が銀メダルを獲得した。決勝で2分8秒38をマークし、2位を同着で分け合った。日本のお家芸ともいえる種目で、日本勢3大会連続の表彰台となった。東洋大出身で、数々の名選手を育てた平井伯昌コーチの門下生。“新社会人”として臨んだ世界大会で、フレッシュな風を吹き込んだ。武良竜也(ミキハウス)は4位。東京五輪金メダルのザック・スタブルティクック(オーストラリア)が2分7秒07で制した。

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前半は8人中7番手に控えた花車が、後半に力を解き放った。同じく後方から進んだ東京五輪金のブルティクックを見ながら、タイミング良くスパート。伸びやかなフォームで、ラスト50メートルで一気に順位を上げた。2位同着でフィニッシュし、「この種目でしっかり世界と戦わなきゃいけないという使命感があった。ほっとしている」。日本勢3日連続の表彰台、今大会最高の銀メダルとなった。

めきめきと頭角を現しているホープ。東洋大卒業直前の3月の日本代表選考会で優勝をさらい、代表初選出をつかんだ。そのときは世界選手権に出場することについて「ぜんぜん実感がわかない」と笑っていた。しかし約3カ月半後、急成長している姿を世界に披露。「ベスト(2分7秒99)には及ばなかったたが、メダルを取れてほっとしている」と喜びをかみしめた。

香川県内屈指の進学校、丸亀高出身。医学部を目指した時期もある。高校2年時に男子100メートル平泳ぎでインターハイ優勝。このとき、北島康介らを育てた平井伯昌監督に素質を見いだされた。その名将は愛弟子の花車について「頭がいい選手。すごく考え、しっかり理解して、行動に移す」と評する。大学4年間で、頭を使いながらこつこつと取り組んできた練習が実りつつある。

男子200メートル平泳ぎは、北島康介らが活躍した日本のお家芸ともいえる種目。今回の銀で、日本勢3大会連続の表彰台となった。世界の強豪と渡り合った経験を財産に、24年パリ五輪へ。さらに大きく成長を遂げていく。

〇…花車は今春からキッコーマンに入社。企業情報を発信するコーポレートコミュニケーション部に所属する。上司にあたる臼井一起部長は銀メダルを獲得した花車に、「昨年からの上昇気流に乗って良い結果に結びついたことは、一緒に働く仲間としてとてもうれしい。目標の五輪に向けて、さらなる高みを目指して欲しい」と期待した。同社にはこれまで、12年ロンドン五輪銅メダルの上田春佳らが所属。

◆男子200メートル平泳ぎ 古くは28年アムステルダム五輪で鶴田義行が日本水泳界初の金メダルを獲得。近年でも北島康介が04年アテネ五輪、08年ロンドン五輪と連覇するなど、日本のお家芸とも言える種目。世界選手権では17年に小関也朱篤が銀メダル、17、19年に渡辺一平が銅メダルを獲得しており、花車の銀メダルによって日本勢3大会連続の表彰台となった。

◆花車優(はなぐるま・ゆう)2000年(平12)1月28日生まれ、香川県坂出市出身。香川・丸亀高から東洋大を経てキッコーマン入社。3月の国際大会日本代表選手選考会の200メートル平泳ぎで派遣標準記録を突破して優勝し、初の日本代表入りを決めた。同種目では5月の日本選手権も優勝。珍しい名字については「全国に50人ぐらいしかいないことは、なんとなく知っている」。

 

▽男子100メートルバタフライ準決勝 

水沼尚輝(新潟医療福祉大職)が50秒81をマークし、自身が持つ日本記録を0秒05塗り替えた。今大会200メートルで金メダルのミラク(ハンガリー)に次ぐ全体2位で決勝に進出。「自己ベストを出して決勝の舞台に進めるのは価値があること」とうなずいた。今年3月の国際大会日本代表選考会で50秒86をマークし、13年ぶりに日本新記録を更新していた。