阪神、ロッテで活躍した鳥谷敬氏(41=日刊スポーツ評論家)がアスリートに迫る「鳥谷敬VSパリ五輪の星」。第3回は女子レスリング53キロ級で公式戦100連勝を達成したばかりの超ホープ、藤波朱理(18=日体大1年)と語り合った。後編では父俊一コーチとの関係性やプライベートまで赤裸々告白。上京したての大学1年生ならではの本音が垣間見えた。【取材・構成=佐井陽介、木下淳】

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鳥谷 ちなみに高校では父親が監督、今はコーチ。難しさはありませんか?

藤波 お父さんだからこそ言われると腹が立つこともめちゃくちゃあるし、反抗してしまうこともあります。逆に、お父さんだから分かってくれているところもある。小さい時からそれが当たり前なので。腹立つな、ぐらいです(笑い)。

鳥谷 家でも練習でもずっと一緒なんですよね?

藤波 そこは切り替えるという約束をしました。家には持ち込まない、と。

鳥谷 食事はどちらが担当しているのですか?

藤波 基本はお互い自分で作っています。好みも違うし、自分は減量期もあるし、こだわりが強いので。

鳥谷 なるほど。ここからはプライベートな部分も聞かせてください。三重の高校から東京の大学に進んで変化はありますか?

藤波 やっぱり東京、楽しいっすね(笑い)。おいしいものがいっぱいある! よくインスタに載っているお店って大体東京じゃないですか。そこに行けるのがすごく幸せです! 基本は日曜日がオフで、昨日は渋谷のスクランブル交差点にも行きました。人、ヤバかったです(笑い)。

鳥谷 趣味は?

藤波 食べることしか考えてないです(笑い)。今はスパイスカレーを巡っています。マジで最高です。キリがないです(笑い)。

鳥谷 音楽はどんなジャンルを聴くんですか?

藤波 洋楽が多いです。でも試合日はサザンオールスターズさんの「東京VICTORY」を聞くと決めています。昔、試合会場で流れていたからですかね。

鳥谷 東京五輪を思い出す曲ですね。最後に藤波さんにとっての五輪の位置づけを教えてください。

藤波 小さい時から五輪が夢でした。今は2年後にパリがあるので目標になります。五輪は自分だけの目標じゃなく、自分を支えてくれている人たちの夢でもある。まずは自分が行けるようにしっかり1つ1つ勝っていきたいと思います。(終わり)

◆藤波の現状 6月18日の明治杯全日本選抜選手権に優勝して公式戦100連勝。2連覇が懸かる9月の世界選手権(セルビア)代表に内定した。53キロ級には東京五輪金メダルの志土地(旧姓向田)真優もおり、強力ライバルを倒した先にパリ五輪金メダルがある。

◆藤波朱理(ふじなみ・あかり)2003年(平15)11月11日、三重県四日市市生まれ。88年ソウル五輪代表候補だった父俊一コーチの影響で4歳から競技を始める。中学2年の全国大会決勝で伊藤海に負けて以来、全勝。いなべ総合学園高から今春、日体大に進んだ。21年10月の世界選手権で日本勢の高校生では5人目、史上2番目の年少世界王者に。総合格闘家の兄勇飛(26)も17年の世界選手権男子フリースタイル70キロ級銅メダル。164センチ。

◆鳥谷敬(とりたに・たかし)1981年(昭56)6月26日、東京都出身。聖望学園3年夏に甲子園出場。早大を経て03年ドラフト自由枠で阪神入団。1939試合連続出場はプロ野球歴代2位。17年に通算2000安打を達成した。19年オフに阪神を退団し、ロッテで2年間プレーして現役引退。13年WBC日本代表。11年最高出塁率、ベストナイン6度、ゴールデングラブ賞5度。180センチ、79キロ。右投げ左打ち。

【前編はこちら】【鳥谷敬vs藤波朱理】「目をつぶると不安」レスリング100連勝18歳の苦悩解消法に鉄人共感