車いすテニスでは例がない1万人に迫る観衆がため息と感嘆のどよめきを挙げ、日本男子の世代交代をめぐる歴史に残る激戦を後押しした。日本男子の次世代を担う若き天才、16歳で世界5位の小田凱人(東海理化)は、東京パラリンピック男子シングルス金メダルの王者、国枝慎吾(38=ユニクロ)に、最終セット1-5から追い上げ、6-5リードの時に残り2点で勝利まで迫った。しかし、3-6、6-2、6-7のフルセットで力尽きた。

小田は、敗れた後に、ベンチでタオルをかぶり動けず。準優勝のスピーチでは、涙で言葉が詰まった。「(涙は)悔しいわけじゃない。皆さんの大勢の力で追い上げられ、うれしくて勝手に涙が出てきた」。この日のような大観衆の目でプレーするのは「初めて」。相手は国枝で、舞台は日本のテニスの聖地。自然と高揚した。

国枝が、世界ツアーで日本選手に敗れたのは、06年7月の全英オープン準決勝が最後だ。04年アテネのパラリンピック男子ダブルスで金メダルを獲得したペアの斎田悟司に、フルセットで敗れた。それ以来、16年2カ月、日本選手相手に86連勝で、無敗を築いてきた。その国枝に、16歳の小田が、土をつける寸前まで迫った。

1-5から4本のマッチポイントを跳ね返し、6-5とした。「追い詰められてから一気にゾーンに入った」。失うものは何もないと、得意の強打で、国枝のショットを粉砕した。しかし、6-5とリードした時に「(勝ち)びびった」。国枝に16年ぶりに勝つ日本男子という現実に、ゾーンから目が覚めた。

敗れたが、小田は最後まで声援を送った観衆に誓った。「今日は夢の試合で、夢の場所でもあり、夢の相手でもあった。この舞台に、さらに強くなって戻ってくる」。国枝の背中は、もう目の前に迫っている。【吉松忠弘】

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