世界王者の宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が自然体で首位発進した。SP今季世界最高の99・99点を記録し、2位の山本草太(中京大)に5・13点差。3位の三浦佳生(オリエンタルバイオ/目黒日大高)と3人で記者会見に出席すると「本当に誰がトップに来るか分からない。今の日本は本当にレベルが高いと思う」と感慨深げに振り返った。

おごることなく、等身大の自分を受け入れた。取材エリアでは開口一番に「決して悪くなく、練習をしてきた成果がしっかりと出るショート(プログラム)でした」とジャンプを中心に自己分析し、こう続けた。

「ジャンプ以外は『練習不足だな』と思いました。試合前にステップやスピンは、不安まではいかないですが心残りがありました」

冒頭で武器となる4回転フリップ、続いて4回転-2回転のトーループも成功。演技後半のトリプルアクセル(3回転半)でも2・06点の加点を引き出した。演技構成点は3項目全てで10点満点の9点台を記録し、45・57点は2位に5・38点差。ジャンプを織り交ぜた完成度の高さは数字に示されたが、スピンやステップは「練習不足」と言い放った。

「今回は『(ランビエル・コーチと)2人で心地よい大会にできたら』というのは、自分の心の中にあります」

今季もGP2連勝を飾ったが、前戦の第5戦NHK杯までは靴の調整に悩まされた。シーズン本格化を前に、当初は昨季で終える予定だった靴を再使用。だが、慣れるのには時間を要した。NHK杯後にはフリー「G線上のアリア」の振り付けを担当した宮本賢二氏ともレッスン時にも意見を交わし「良いところを探すのではなくて、なじませていくしかない」と割り切った。気持ちは前向きになり、大会直前はランビエル・コーチと拠点のスイスで充実した練習を積み上げた。

「久々に充実感を持って、この大会に臨めています。後悔のない練習を積み重ねてこられた。ただ、練習してこなかった部分はしっかり出ていた。(同じジャンプ構成でも昨季は)100点は超えていた。スピン、ステップで練習していないところが出ていると思います」

SP首位発進により、フリーは最終滑走。初優勝がちらつく位置だが、ここでもスタンスはぶれない。

「フリーを本当に今日までたくさん練習してきた。ジャンプもそうですが、フリーのプログラム全体としても自信を持って滑れる。練習してきたことが、どのようにして試合という場で出るかを、自分で知るためのいい試合になる。大きな舞台で『成績も出したい』とも思いますが、何よりやっぱり、今回のショートを終えて気づけたこと、やってきたことがしっかり出せたこと、いろいろな学びがある。次のステップにいける。フリーもそういった気持ちで終えられたらと思っています」

まずは練習での成長を示し「心地よい大会」にする。結果は、その後についてくる。(トリノ=松本航)