B1仙台89ERSの「リョータ」ってどんな人? 「リョータ」ことPG小林遥太(31)は今季、名古屋ダイヤモンドドルフィンズから仙台に移籍。ここまで32試合中27試合に先発出場するなど、堅実なゲームメークは仙台に欠かせない。そんな司令塔を語る上で欠かせないのが「ラーメン作り」という一風変わった趣味だ。今回はリョータに“ラーメン愛”を語ってもらった。【取材・構成=濱本神威】

    ◇    ◇    ◇  

ラーメンはスープから作る。「ラーメン作り」のきっかけは2年前から始めたキャンプだ。当初はインスタントラーメンを作っていたが、キャンプ仲間からラーメン担当に抜てきされ、闘志に火がついた。「『本格的にやったろうかな』と思って、ずんどうを買いました」。作るのは決まって「豚骨ラーメン」。「くっさい豚骨ラーメンがめちゃめちゃ好き。くさみ取りはしないようにしています」とこだわりをのぞかせる。元々料理が好きで、小学生の頃からラーメン作りをはじめ、一工夫を加えるこだわりを持っていた。キャンプのラーメン担当は、こだわりの人・小林にとって絶好の舞台だった。

練習や試合がないオフにラーメンを無性に食べたくなる時がラーメン作りの合図。「豚骨を血抜きしてひたすら煮込む。いろんな野菜を入れたりして8時間から10時間は煮込んでいます」。煮込んでいる間は、スープを気にかけながら趣味の競馬に興じ、「楽しいです。身体はしっかりと休めています」と時間を有効に使い、オフを満喫している。自宅ではシンプルにスープと麺だけで食べるが、キャンプではチャーシューや煮卵も自作。将来的には麺や豚骨以外のスープへの挑戦も画策中。「まだ麺まではたどり着いていない。次は製麺機でも買ってやろうかなと…。魚介系にも挑戦してみたい」と意欲的。“ラーメン屋小林”の新たな挑戦に期待だ。

ラーメンはスープが命。スープはバスケットボールで言えばポイントガードと小林は言う。「スープがなければ、麺やチャーシューも引き立たない。そういう意味ではスープはポイントガードかもしれないですね(笑い)」。小林は今季、29試合で102アシスト(1試合平均3.5本)をマーク。B1開幕前、「(僕は)経験を生かして周りを生かすタイプ」と語っていたが、言葉通りの周りを引き立たせる活躍でチームに貢献している。

プレータイムも昨季の1試合平均6分50秒から23分31秒(26日時点)と大幅に伸ばし、得点では昨年11月27日川崎戦で17得点、7日群馬戦で19得点のキャリアハイを更新するなど、日本人選手の先頭を走る。「豚骨、野菜、にんにくなどを一緒に煮込むことによってうまいスープができあがる。豚骨だけじゃダメなんです。いろんなものが重なり合ってひとつのスープができる。豚骨スープのように、チームでひとつになって頑張りたい」。チームは渡辺翔太(24)、ラショーン・トーマス(28)がインジュアリーリスト(故障者リスト)に登録される苦しい状況の中で青木保憲(27)、ベイリー・スティール(25)ら新戦力を獲得。一層結束力を高め、「仙台89ERSのスープ役」としてチームを引っ張っていく。

チームは22日、富山との第2戦を81-77で勝利し、連敗脱出。9連敗の長いトンネルからやっと抜け出した。次節からはホーム4連戦を控えており、連敗脱出を追い風にホームのブースターの前でも勝利をつかむ。28、29日滋賀戦、2月4、5日名古屋D戦と、滋賀でプロキャリアをスタートさせ、昨季までの4季を名古屋Dでプレーしていた小林にとってもこの4連戦は特別な試合だ。「燃えないといったらウソになる。心はアツく、頭は冷静に。チームが勝つために自分ができることをやりたい」。チームは現在9勝23敗と負け越しているが、「ひとつのルーズボールやリバウンドなどで、ひとりでも多くの人の心を震わせるようなプレーをしていけたら。派手なプレーもそうですが、泥くさいことが一番大事になってくる。それはチーム全員が分かっている」とその信念は変わらない。お手製の“ドロッとくさい”豚骨スープのように、“泥くさく”後半戦も戦い抜く。

◆小林遥太(こばやし・りょうた)1991年(平3)9月12日生まれ。新潟県出身。洛南-青山学院大。洛南では2年時にウインターカップ優勝。大学でも関東選手権、関東リーグ、インカレ優勝。14年に滋賀でプロキャリアをスタートし、18年から昨季まで名古屋Dでプレー。178センチ、77キロ。