500メートル2冠へ。八戸スケート国体(青森)のスピードスケートが30日、青森・YSアリーナ八戸で開幕する。初日の成年男子500メートル予選には、21日の全国高校スケート同種目を制した千歳市出身の広瀬勇太(群馬・嬬恋高3年)が出場する。元世界記録保持者で、10年バンクーバーオリンピック(五輪)銅の加藤条治氏が持っていた35秒46を、0・08秒上回る35秒38の大会新をマークした高校スケートに続く優勝をうかがう。

父誠さん(57)は、一時代を築いた名選手だった。87年世界スプリント選手権では、88年カルガリー五輪500メートル銅の黒岩彰氏や94年リレハンメル五輪1000メートル金のダン・ジャンセン氏と競った。「父の動画はわりと見る機会が多いので『かっこいいな』と思っていました。友人に見せたら『コーナーの滑り方が似てる』と言われた」と笑う。

物心ついた時には、自宅のある千歳とスケートリンクのある苫小牧を往復していた。父や、バンクーバー五輪団体追い抜き銀の穂積雅子氏(36)らに指導を受けて成長。小学校のころには、父が高校スケートの500メートルを勝っていたことも知った。「40年前のことですけど、父が全国で優勝していることはずっと知っていたので『優勝できたらな』と思っていました」と話す。

親子での全国制覇を目指すため、高校はあえて道外の嬬恋高を選択。父のライバルでもあった黒岩氏の母校で自らを鍛え上げた。昨季は父が2位だった世界ジュニア選手権で3位。今季は高校スケートで全国親子制覇を達成した。直後に「おめでとう」とひと言だけメールを送った父誠さんは「私よりも、ずっと力がありますよ」と、うれしそうに息子の頼もしい姿を見つめた。

4月には高崎健康福祉大に進学する。「大学3年生の時にオリンピックがあるので、それを目指します。(大学の先輩の)新浜(立也、26=高崎健康福祉大職)さんのように、世界で戦えるレベルまで自分も行けたら」。父がかなえられなかった五輪出場、メダル獲得まで、挑戦は続く。【中島洋尚】

◆広瀬勇太(ひろせ・ゆうた)2004年(平16)10月2日、千歳市生まれ。千歳高台小-千歳中-群馬・嬬恋高。幼稚園年少のころに競技を始めた。千歳中3年の全国中学500メートルで2位。高1で全日本ジュニア選手権、ジュニアワールドカップ(W杯)(オーストリア・インスブルック)500メートル優勝。高2の世界ジュニア選手権500メートル3位。家族は両親と弟。175センチ、71キロ。