加藤未唯(ザイマックス)ティム・プッツ(ドイツ)組が大一番を迎えた。

女子ダブルス3回戦では加藤のボールガールへの返球が頭に直撃し、危険な行為とされて失格。涙を流したが、混合ダブルスでは前回大会でオランダ選手と組んで優勝した柴原瑛菜に続く、日本選手の決勝進出を果たした。

加藤は17年全豪オープンの女子ダブルスで、穂積絵莉と組んで4強。当時、加藤が小学3年生から高校卒業までを過ごした「パブリックテニス宝ヶ池」に足を運んだ記者が、テニス人生のルーツをたどっていた。

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JR京都駅から地下鉄烏丸線で20分。

終点の国際会館駅から10分ほど歩いた場所に「パブリックテニス宝ヶ池」がある。

加藤はこの地で、小学3年生から高校卒業までラケットを振った。

指導歴45年。加藤を約10年間にわたって担当した当時72歳の石井知信さんは、初対面から運動能力の高さに圧倒され「これはすごい選手だ」と驚いたという。

技術指導は一切しなかった。

バックハンドに課題があれば「ここが打てへんな~」と言い、その位置へ何度もボールを投じる。

肘の角度、足の踏み出し方…。「こう打ちなさい」と言うことはなく、加藤は自身で課題を克服する打ち方、試合で勝つ戦略などを考え続けた。

「パブリックテニス宝ヶ池」まで、自宅から片道約3キロ。両親に頼らず、バスと徒歩、時にはランニングで通った。

ジュニアの4大大会など海外遠征にも、中学生の頃から1人で向かった。

一方、ゴルフでは深く膝を曲げる「我流」のスイングをし、ドライバーで200ヤード近く飛ばしたという。

在籍10年間で石井さんが生観戦したのは、片手で収まる程度だった。取材の中で“放牧”という言葉を出した時、師は笑っていた。

「放牧か。うまいこと言いよったな。そうや。でも、わしは羊飼いが『ピ~ッ』と笛を鳴らしても、そっぽ向いて、どっかに行く羊が好きやな。同じ指導をしても、同じような選手しか育たない。そんなもん、人によって違う。未唯は本当にテニスが好きだと思う」

涙あり、笑顔ありで迎えた決勝の舞台。

自分らしさを出し、加藤が頂を目指す。【松本航】

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