ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で8強入りを果たした日本代表は世界を驚かせ、多くのファンの胸を揺さぶりました。日刊スポーツでは担当記者による「グッときた瞬間」を連載。取材で見えた、選手の光り輝く瞬間を振り返ります。

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日本代表の戦いが終わった南アフリカ戦。試合を終えた瞬間からリーチ・マイケル主将(31)の姿を目で追っていた。自国開催のワールドカップ(W杯)。どれほどの重圧と闘ってきたのだろう-。ぼんやりとした思考の中で、ファンに深々と頭を下げる背中を見ていると、リーチの根っこにある強さを感じた。

恥骨炎の影響もあり、アイルランド戦は先発落ち。弱みは見せなかったが、「いつも通り」でないことは明らかだった。普段のテストマッチでは、試合に集中するため、数日前からは家族とも連絡をたつが、今回のW杯ではリーチに近い複数の関係者が、リーチから連絡がきたと証言した。痛みが残る自身の体へのいら立ちと、快進撃を続けるチーム。折り合いを付けるのは容易でなかったと思う。

それでも、ぶれない姿勢を貫いた。歴史的勝利を収めたアイルランド戦の翌日会見。時間となり、一度は席を立ったが、思い出したようにマイクを取り、同日夜のバレーボール女子日本代表戦のことに言及。「みんなで応援しましょう」と締めくくった。何げない一言だったが、ワールドカップ(W杯)開幕1年前のタイミングで発したリーチの言葉とつながった。

「日本人のメンタルが一番強い。それをあらためてこのW杯で見せたい。デカイ相手を倒す姿を日本中に見せたい。それは、日本の他のスポーツにも良い影響を与えられると思う」

言動、言葉にうそがないから愛される。南ア戦翌日。チームとして最後のミーティングで「このチームの主将をできたことを誇りに思う」と語り、涙を流した。「勝つためには主将が最強でないと勝てない」。何度も繰り返してきた言葉を、リーチは自ら証明した。【奥山将志】(おわり)