2日に閉幕した水泳の世界選手権の競泳男子200メートル背泳ぎで銀メダルを獲得した入江陵介(19)が、宅地建物取引主任者(宅建)とファイナンシャル・プランナー(FP)の資格取得を目指す。5日、世界選手権が行われたローマから帰国。現在、近大法学部2年に在籍している入江は、ロンドン五輪直前の12年3月の卒業までに、両資格の取得を計画していることを明かした。プールの外でも目標を持つことで、五輪へのプレッシャーを解放させる相乗効果で、五輪金メダル獲得につなげる。

 世界大会初のメダルを獲得した入江の口から、意外な目標が飛び出した。「水泳だけじゃダメだと思うので資格を取りたい。考えているのは宅建とFP」。成田空港の到着ロビーで真顔で明かした。ロンドン五輪直前の大学卒業までに資格取得を目指すという。法学部に在籍し、将来は法律学を生かせる仕事に就く夢がある。「勉強もやってきたので無駄にしたくない」と話した。

 ロンドン五輪での金メダル獲得の目標も変わりはない。世界一への道は険しい。その上、水泳と勉強の両立となれば想像を絶する苦労が待ち受ける。しかし、勉強でもエリートだった入江にそんな心配はない。近大付高時代の成績は3年間オール5。近大でも1年の成績は「1つを除いてすべて『優』だった」(入江)。むしろ1日の生活の中で水泳と勉強で気持ちを切り替えることで、五輪の重圧から一時的に解放される効果もある。

 今大会でライバルのロクテ(米国)が個人メドレーと自由形リレーの2種目で金メダルを獲得した姿にヒントを得た。泳ぎの幅を広げれば、選択肢も増える。行き詰まったときに、目先を変えることもできる。「(ロクテは)そこに強さがあると思った」(入江)。今後は練習でも自由形を重視するという。さらに勉強に力を入れることで、プールの中の自分を客観的に見詰めるつもりだ。

 今大会は自らの「幻の世界記録」を更新しながら銀メダルに終わったが、「きっと金メダルだったら目標を見失っていた。ロンドンではもっといい色のメダルを取りたい」と前向き。帰国の飛行機の中では授業の課題に追われたという。この日から3日間合宿を行った後、約1週間のオフは勉強に集中する。五輪イヤーの2つの夢への挑戦はもう始まっている。【高田文太】