<大相撲初場所>◇14日目◇23日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(29=高砂)が、史上単独3位となる25回目の優勝を果たした。大関日馬富士(25)を1分13秒9という大相撲の末、右下手投げで裏返して13勝1敗。2敗の力士がいないため、千秋楽を待たず、2場所ぶりに賜杯を手にすることが決まった。優勝25回は、24回で並んでいた北の湖を抜き、32回優勝の大鵬、31回の千代の富士に次ぐ歴代単独3位の記録。泥酔して暴行騒動を起こすなど土俵外では相変わらずだが、土俵ではきっちりと結果を残した。

 疲労困憊(こんぱい)の末につかんだ25回目の優勝だった。昨年は3勝3敗と五分の日馬富士戦。朝青龍は立ち合いから左上手を取ると、がっぷり胸を合わせて右下手を引いた。「一瞬で決めたかったんだけど、なかなかしぶとかった。左手(の握力)がどんどんダメになってきて…。右だけつかんで、スキがあったら投げてやろうと思った」。1分を超える大相撲を、タイミングよく豪快な下手投げで決めた。花道ではファンの声援に手を挙げてこたえたが、引き揚げると「…疲れた」と本音ももらした。

 元横綱北の湖を抜く25回目の優勝は史上単独3位。「ブロンズメダルだね」と笑い「20回目までは速かったけど、そこから5回はどうだったかな…」とポツリ。21回目の優勝を決めた07年名古屋場所以降はサッカー騒動や左ひじ痛などで、14場所中優勝は4回。道のりは楽ではなかった。

 進退の掛かった昨年初場所で復活優勝を遂げ、昨年夏ごろから「集中力が増してね。再スタートの気持ちになった」と話す。どうしても負けられない、簡単には引退できない理由があった。朝青龍は母国モンゴルでは大実業家としての顔も持ち、親族らが経営する「ASAグループ」の発展に尽力している。だが、モンゴルに詳しい関係者によると「もともと経営状態は思わしくなかったが、リーマンショックで追い打ちをかけられている」と証言。資金の豊富な海外企業に押され気味だという。そんな“土俵外の敵”に太刀打ちするためにも、本業で稼がなくてはならない。1回でも多く優勝する必要がある。

 日本での新たなスポンサー探しも始めている。1月8日には都内の幼稚園を極秘で訪問した。相手側の意向で取材などは認められなかったが、朝青龍に近しい関係者は「子どもと触れ合う姿でイメージアップを図りたかった」と明かす。昨年の復活優勝後は炭酸飲料のCMに起用された。今場所中には「泥酔暴行事件」なども報じられたため、関係者は「何とかしないと…」と躍起になっている。

 “天敵”といわれた横綱審議委員会委員の内館牧子氏(61)が任期最後となる場所での優勝に「花を添えられてよかった」と笑顔。24日の千秋楽では横綱白鵬戦を迎える。「明日も明日でね」と自然体を強調したが、昨年の本割では6戦全敗。まずは本業で有終の美を飾りたいところだ。【山田大介】