<東京6大学野球:慶大7-1早大>◇最終週最終日◇1日◇神宮

 慶大は福谷浩司投手(2年=横須賀)の9安打完投で連勝。全日程終了時点で勝ち点、勝率で並び、3日、両大学にとっては1960年(昭35)秋の「早慶6連戦」以来となる優勝決定戦を行う。

 早慶6連戦などまるで知らない理工学部の2年生が50年ぶりの優勝決定戦に導いた。慶大・福谷が真顔で言った。「早慶6連戦?

 知らないです。調べときます。決定戦も明大戦のあとに知って。プロみたいに何試合もやるなら勘弁してくれ、と思ってました」。

 自らのバットで勝負を決めた。4回2死一塁。西武1位・大石の2球目をとらえた打球が左翼席で大きく弾んだ。7-1。その打席内で両手を突き上げた。「スイマセン。恥ずかしながら。大石さんなら真ん中真っすぐしかないと。もしかしたら奇跡が起きると思って」。今季20打席目の初安打だった。「のちのち自慢できると思う」と1位指名からのアーチを喜んだ。江藤省三監督(68)は「ウチではあいつが一番飛ばしますから」とその打撃を評価する。3回には同じ2年生の山崎錬が先発福井から3ランを放った。広島1位からの1発に「これは5000万円の価値があるぞ」。同監督はこんな声を上げ、慶大ベンチは一気に盛り上がっていた。

 そんな展開にも、連投の福谷はマウンドを降りなかった。「僕が投げたいと言いました。最後まで投げて流れをやらない方がいいと思って」。9回9安打1失点。早慶戦初勝利をつかんだ。「野手にドラ1はいないんで」。そんな福谷には優勝決定戦にも期待がかかる。「ドラ1の3人とまたやれる。幸せをかみしめてやりたい」。このときは笑顔で話した。【米谷輝昭】