阪神対ヤクルト 7回表、阪神2番手で登板した桐敷(撮影・前岡正明)
阪神対ヤクルト 7回表、阪神2番手で登板した桐敷(撮影・前岡正明)

最後は1点差をしのぐ“薄氷の勝利”になった。それを演出したのは、桐敷拓馬投手が示した「リリーフ力」だ。

山田久志(日刊スポーツ評論家) 今年はセ・パ両リーグとも打ち合いが少ない。阪神はいきなり塩見の本塁打で先手をとられ、2回もノーマークの三盗を許し、浅い中犠飛で簡単に2点目を与えた。前日26日もミス続きで敗れていたから、序盤からいやな流れだった。それを追いつき、ひっくり返した。特に桐敷が果たした役割は見応えがあったね。

阪神は大竹が7回1死から3連打を浴びると、たまらず桐敷を投入した。この時点で2点リードだったが、7番中村に一打を許せば“流れ”は変わっていた。

山田 満塁の場面で出て行くピッチャーは本当に難しいものだ。そこを桐敷がよく投げきった。桐敷の好投が光ったが、言い換えれば、捕手坂本と打者中村の対決ともいえた。阪神バッテリーは中村の右打ちは察していただろうから、「球種」「コース」をうまく配して投げ分けたということだ。

7回1死満塁。中村に初球シュート(ボール)、2球目がスライダー(ファウル)で1-1。ここから3球続けざまのストレートで、最後もインコースにストレートで、中村のバットに空を切らせた。

山田 落ちる球を投げなかったのは、もし高めに浮いて甘く入ったとき、押っつけられるのを避けたかったからだろう。だから真っすぐとスライダーを投げ分ける配球を選択したのかもしれない。そこで“中村封じ”にストレートを突っ込んでいくわけだが、そもそも右を狙う右打者はインコースをさばきやすい。でも中村がイメージした以上のいいコースにその球が決まったのだろう。続く代打青木には粘られながら押し出し四球で1点を失うが、あそこもいいボールだった。

阪神は再び上昇気流に乗るだろうか。

山田 少なくとも交流戦までは、このようなもみ合いが続くとみている。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】

阪神対ヤクルト 7回表ヤクルト2死満塁、赤羽を空振り三振に仕留め、大竹(右)とタッチを交わす桐敷(撮影・前田充)
阪神対ヤクルト 7回表ヤクルト2死満塁、赤羽を空振り三振に仕留め、大竹(右)とタッチを交わす桐敷(撮影・前田充)