いきなり横浜の帽子をかぶって登校した友達に「実は横浜ファンなんじゃ」と明かされた。広島の小学生だった私には衝撃的だった。38年ぶりに横浜が優勝した98年の出来事だが、今でも鮮明に覚えている。16年は何人の“隠れカープファン”が報われただろう。

 先日、緒方監督の実家でもある佐賀・鳥栖市の「鳥栖魚市場」にお邪魔させてもらった。内山洋社長は優勝間際の様子を「盛り上がりました。こんなにファンがいたんかと思った」と明かしてくれた。球場に応援に駆けつけた際には「帰りの新幹線でも、山口、小倉や福岡で降りる人もたくさんいましたよ」と続けた。

 鳥栖は福岡との距離が近く、大方がソフトバンクファン。西鉄時代からの西武ファンもいるが、広島ファンは少ない、と思っていた。「堂々とユニホームを着て帰られるようになったんですね」と内山社長は笑う。カープファンは全国に広がってはいる。だが他球団の本拠地では肩身が狭かったファンもいたはずだ。

 ファンの輪も広がる。サガン鳥栖とサンフレッチェ広島の試合があれば「鳥栖魚市場」を訪れるサンフレッチェサポーターも増えたという。あのとき横浜の帽子をかぶった彼は横浜に移住。堂々と「負けないぞ」と年賀状に書いてきた。【広島担当=池本泰尚】