沖縄大会が先週18日に開幕した。今年も高校野球の季節がやってきた。そして先週、高校野球ファンのNさんから「お約束」の1通のメールが届いた。

 Nさんから「優勝校予想メール」が届くのは今年で4年連続。Nさんは毎年、地方大会開幕前に(代表が決まってからではない)夏の甲子園優勝チームを予想する。それを生き甲斐にしている。「企業秘密」だとして予想の理由は明かそうとしないが、絶対の自信を持っている。

 2013年こそ初出場初優勝の前橋育英(群馬)を外したものの、14年の大阪桐蔭、昨年の東海大相模(神奈川)は見事的中させた。例年10校ほどを優勝候補に挙げ、その中から優勝チームが出れば的中というシステム。

 ちなみに昨年は「横綱チーム」として常総学院(茨城)東海大相模(神奈川※)八戸学院光星(青森)仙台育英(宮城※)大阪桐蔭(大阪)の5校、「関脇チーム」として浦和学院(埼玉)静岡(静岡※)健大高崎(群馬※)天理(奈良※)敦賀気比(福井※)の5校。「サプライズ」枠で東海大甲府(山梨※)の計11校を挙げた。このうち甲子園に出場したのは※印を付けた7校。東海大相模と仙台育英が決勝進出を決めた時点でNさんの予想は当たった。

 さて、今年である。Nさんは第1グループから第3グループに分けて14校の名前を挙げてきた。いつも理由は明かさない。「今年は、これで」とひと言。ただ今回は「第3は書かないで。多すぎるから。プライドが許さない(笑)」と添えてあった。Nさんのプライドを尊重して第3グループの4校は伏せておく。

 <第1グループ>

秀岳館(熊本=今春センバツ4強)

敦賀気比(福井=昨春センバツ優勝)

中京大中京or東邦(愛知)

横浜(神奈川)

二松学舎大付(東東京)

 <第2グループ>

東海大甲府(山梨)

大阪桐蔭(大阪)

木更津総合(千葉=今春センバツ8強)

作新学院(栃木=昨夏まで5年連続出場中)

※()内は筆者加筆

 いずれも名前の知れた強豪校ばかり。13年の前橋育英のような初出場校が優勝してしまうとハズレとなる。さらに中京大中京、東邦がともに甲子園にコマを進められなかった場合、来年のこのコーナーで厳しく指摘したいと思う。

 さて、蛇足ながら私の予想も。

 昨年は、春の関東大会で甲子園優勝の東海大相模に完勝した浦和学院(埼玉)と予想も見事ハズレ。浦和学院はまさかの県大会敗退と、予想は「完敗」に終わった。

 今年もまったく自信はないが、あくまでも予想ということで東西から1校ずつを挙げておきたい。

 横浜(神奈川)と履正社(大阪)の2校。

 横浜は、群馬で行われた春季関東大会で3試合、そして22日に川崎市のJX-ENEOSグラウンドで行われた慶大(控え中心)との練習試合の計4試合を見た。何と言ってもドラフト1位候補右腕、藤平尚真投手(3年)が素晴らしい。150キロを超すストレートに鋭いスライダー。慶大戦では大学生から14三振を奪い1失点完投勝ちした。球数は150球を超えたが最後まで球威は衰えなかった。関東大会では3連投も経験するなどスタミナ十分。しなやかさと馬力を兼ね備えている。涌井秀章(横浜OB、現ロッテ)と渡辺久信(元西武監督)を足して2で割ったイメージか。

 スカウトに話を聞くと「(右打者の)内角にしっかり速い球を投げ込める。ここまでの高校生はなかなかいない。終盤になってスライダーもキレてきたし間違いなく1位候補」と絶賛した。ここまで甲子園には出場していないが、激戦の神奈川を勝ち抜き、甲子園の晴れ舞台で好投すれば一気に全国区のスターに上り詰める可能性がある。打撃も素晴らしいことも付け加えておきたい。

 ただ、この横浜高校には一つ不安が残った。ネット裏で慶大戦を一緒に観戦したベテランアマ野球ウオッチャーのHさんがボソッとつぶやいた。「横浜の選手はそんなに足が速くないね」。Hさんの左手にはストップウオッチが握られており、打者の一塁までのタイムを計測していた。速くないというか、全力疾走をする選手の姿をあまり見ることができなかった。昨夏のメンバーが多数残り、万波中正外野手ら有望な1年生も加入した。戦力的には十分に全国制覇を狙えるが、妙に落ち着いているというか、必死さ、ひたむきさがイマイチ伝わってこない。もう一人、一緒に観戦したGさん(神奈川の高校野球に詳しい)は「課題は守備力」とし、「さらに心配な点は渡辺(元智監督)、小倉(清一郎コーチ)の両氏が引退され、チーム全体にピリっとした覇気が感じられない」と今年のチームを評した。

 タレント揃いで、良く言えば大人のチームも、受け身に立つと足元を救われる危うさがある。春季関東大会で就任1年目の平田徹監督を取材した。指導方針を聞くと「選手の持っているポテンシャルを最大限出させたい。選手には伸び伸びとプレーさせたい」と話した。夏の大会が始まれば自然と選手の目の色も変わると思うが、唯一の不安は精神面ではないだろうか。

 一方、西の履正社はどうか。こちらは春の大阪大会でライバル大阪桐蔭を破って優勝。近畿大会も制した。横浜と同じくドラフト1位候補のエース寺島成輝投手(3年=左腕)がいる。近畿大会を視察した数人のスカウトに聞くと「高校生ではNO・1。1位は間違いない」と口を揃えた。2番手の山口裕次郎(3年)もプロ注目の左腕で投手力に関しては全国屈指。横浜同様、激戦の地方大会を勝ち抜けば甲子園でも安定した戦いができるとみた。

 このほか、センバツを制した智弁学園(奈良)、同準優勝の高松商(香川)、4強入りした鍛治舎巧監督率いる秀岳館(熊本)も夏の甲子園でもう一度見たいチーム。

 地方大会は7月末まで行われ代表49校が決定。夏の甲子園は8月7日に開幕する。