「よく、あの球を普通に捕れるよな」。

大船渡(岩手)の今秋ドラフト1位候補右腕・佐々木朗希投手(3年)がいきなり150キロ台の速球を連発した3月31日の作新学院(栃木)との練習試合、ネット裏でそんな声がいくつか聞こえた。

最速157キロ。いずれ「令和の怪物」と呼ばれるであろう佐々木の剛球を受けるのは、及川恵介捕手(3年)だ。作新学院戦後、佐々木の投球の印象を聞くと「自分の感触でいいんですか? まだ7割くらいの出来だと思います」と平然と話した。直前に佐々木は「8割」と答えており、それを裏付けた。

互いを知るから、感性も近くなるのだろうか。岩手・陸前高田市出身。佐々木とは同じ小学校だった。11年の東日本大震災でともに被災。佐々木が大船渡に転居し、離ればなれになったが、中3時に岩手沿岸南部地域の「オール気仙」で再び巡り合った。「それでも、まだ秋の時点ではどこの高校に行くかとか決めていなかったんです。野球をやるかどうかも。そうしたら、朗希が一緒に大船渡高校でやろうって誘ってくれたんです」。ともに受験勉強を頑張った。

高校では、佐々木が先にベンチ入りした。「遠くの方へ行ってしまった感じがした」。故障防止のため、普段も佐々木は過度には投げない。だから及川の捕球練習相手も、150キロ近いマシンだ。多い日には100球ほど受けたという。小学生のころから見慣れているからというのもあるだろう。「慣れれば怖くないですよ」と話す。

バッテリーを組み始め、ミットはすでに3つ目。「(球威で)ヒモは切れやすいし、芯もへたってきます」と笑いながら、全国NO・1…というか高校野球史上最上位に位置するであろうストレートを、時に130キロ台後半に迫るスライダーを、普通の高校球児が平然と捕る。佐々木には「恵ちゃん」と呼ばれ「投げやすいし、相性もいい」と信頼されている。

「7割」の感覚通りなら、おそらくこの夏は157キロでは済まないだろう。「一緒に成長したいです」と鍛錬に励む。悲願の甲子園へのカギがバッテリーにあることは、2人とも分かっている。【金子真仁】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

大船渡・佐々木朗希
大船渡・佐々木朗希