重圧に打ち勝った。作新学院(栃木)が9連覇を達成し、15回目の甲子園出場権を手にした。5試合を戦い計53得点、14失点だった。

「序盤の3回で勝負が決まる」。そう小針崇宏監督(36)に言われ、ナインは3回までに4得点。9回を8安打6得点で勝利した。 石井巧内野手(3年)はこの日は3打席で出塁。先発メンバーの中で1番多い出塁で存在感を放った。5試合を通して、23打席16打数8安打。四死球は毎試合の「7」。三振に至っては「0」だった。

石井は「どんな結果になるか不安で始まった大会でしたが、試合を重ねるごとに成長できた」。5試合中最初の3試合で先制を許した。「先制される事が多かったが、チャンスは必ず来る。1球1球にこだわって練習してきた成果が出ました」と振り返った。

「作新学院という高校しか知らなかった」。兄である日本ハム石井一成内野手(25)の影響もあり「何が何でも作新に行きたかった」。第98回甲子園優勝校。夏は県8連覇中。「プレッシャーがないと言えばウソになる」と明かした事もある。しかし昨秋準優勝、今春ベスト8と県大会ですら優勝ができない。「作新終わった。自分が終わらせたと思った」。まだ17歳の高校生の頭には1つの解決策も見つからなかった。「どうして良いかわからなかった」。

それでも何度もミーティングを重ね、チームを1つの方向に向かわせようとした。「人間はすぐ楽な方へいきますよね」と逃げることはしなかった。「最後に戦うのは俺たちだから」とチームを鼓舞した。

高校野球の意味を問うと、「野球が好きだし、もともと甲子園行きたかった。兄や監督の影響が大きいです。監督にいろんなこと勉強させてもらって、さらに野球が好きになって、野球って面白いとおもった」。

こんな事も言った。

「高校野球を永遠とやりたい。プロ野球よりも高校野球がいい。野球界で一番おもしろいと思う」。

将来、「兄と日本ハムで、二遊間を守りたい」という夢を持つが、高校野球には何事にも代え難い魅力がある。

負けたり、練習がきつすぎて「自分は何回も死にたいと思ったことがある」が「野球をやめたいと思ったことはない」。

死んだら野球ができないよと突っ込まれると、

「死んででも野球がやりたいんです」。と笑顔で言い切った。

甲子園の出場権は勝ち取ったが「まだ半分です。ここからまた1戦1戦勝ち続けます」と目標を口にした。今の気分は「うれしいです」が「このままでは甲子園で勝ち進めないと思うので、もう1度気を引き締めてやっていきます」とすでに甲子園を見据えた。

大好きな高校野球が日本で一番長くできるように。いざ、甲子園に出陣だ。【佐藤勝亮】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

作新学院・石井巧(撮影・佐田亮輔)
作新学院・石井巧(撮影・佐田亮輔)