<高校野球・秋季北海道大会:函館大有斗7-0岩見沢農>◇30日◇1回戦◇札幌円山

 函館大有斗が岩見沢農に7回コールド、7-0と完勝で好発進した。投打の大黒柱の工藤翔太投手(2年)が、投げては無四球の3安打完封。打っても4番で3安打と、先発全員16安打を放った打線の中軸を担った。2季連続甲子園を逃している駒大苫小牧は、旭川南に2-1で競り勝った。

 函館大有斗の工藤が抑えていた感情を表現したのは、最後の一瞬だけだった。岩見沢農最後の打者三島を見逃しの三振に討ち取ると、ホームへ走りながら、右こぶしを小さく握る。仲間に肩をたたかれ、笑みを浮かべた。

 秋の円山は成長の証を披露する舞台だった。第1幕は2回表。無死から4番坂上に内野安打、5番高井に左前打を浴びた。だが、犠打で1死二、三塁になっても慌てない。中飛、遊ゴロでしのいだ。野村直毅捕手(2年)は証言する。「夏まではピンチで力んでいた。秋は、しびれるほど構えたところに球がくる」。第2幕は5回。失策、単打で無死一、三塁から後続を断った。

 片口伸之監督(28)は「ピンチでも冷静でいた。コースにだけ注意して投げさせた。楽に投げているけど、球が手もとで伸びていたね」とエースの成長に口もとをほころばせた。7回、打者25人に対し、前半はカーブ、後半は速球が主体。勝負どころではフォークも2球をまじえての86球。3安打5三振、無四球での3安打完封に、工藤も「投げていて、スポットライトを浴びているように気持ち良かった」と振り返る。

 この夏も背番号1で円山に乗り込んだが、1回戦で北照に0-2の惜敗。「調子は良かったが、ここというときに高めに浮いた」(工藤)という反省から、秋への練習では制球力を磨くことに専念した。打者を立たせ、球が膝もとから落ちるイメージを体にたたき込んだ。

 打撃でもしぶとさを買われて秋から4番に座り、この日も3安打。用具運びや、グラウンド整備、清掃なども率先して行う姿には、片口監督も「チームの柱という自覚がある。何事にも一生懸命」と手放しで褒めるほど。夏から大きく成長したエースは「コースさえ気をつければ皆が守ってくれます。信頼してますから」と、97年夏以来の夢舞台への手応えを十分に感じている。【中尾猛】