第81回選抜高校野球(3月21日開幕、甲子園)の出場校が23日、選抜選考委員会で決定し、昨秋東北大会ベスト4の花巻東(岩手)が“逆転”で初のセンバツ切符を手にした。同県のライバル校で、同大会準優勝の一関学院を抑えての選出。プロ注目の149キロ左腕エース、菊池雄星(2年)は夢舞台での好投を誓った。

 午後3時13分、センバツ初出場の吉報が校長室に届く。その直後、校内放送が響き渡った。授業中だった菊池は快挙を祝福する同級生に抱きつかれ、ハイタッチしながら教室を出て会見場に向かった。1年夏以来2度目の甲子園出場に「去年は(希望枠で)一関学院さんが出て負けた。岩手の野球は、なめられてる。その評価を覆さないといけないと思う」と言い切った。

 東北の代表校は、光星学院と一関学院が有力視されていたが「逆転劇」の予感はあった。昨年9月の秋季県大会決勝。一関学院に9-2で快勝し24年ぶりに岩手を制した。佐々木洋監督(33)は「直接対決を考えると(選考の)土俵に乗るかなと思っていた」。期待通りの逆転選出だった。

 ただ、選手には「『センバツ出場はない』と言い続けてきました。夏に向けて反骨心を持ってもらいたかった」と佐々木監督。一方で「選ばれたら恥ずかしい試合はできない」と練習量は落とさなかった。その冬場にエースが伸びた。昨年10月の東北大会準決勝で光星学院に敗れた後、菊池はプールで1日2キロの泳ぎを欠かさず広背筋を鍛えた。投球練習は週2回に抑え、筋力アップに専念。東北大会時の79キロから84キロに体重は増え、制球も定まった。

 菊池のもとには、プロ全12球団から調査が入っている。特に、甲子園が本拠地の阪神からは熱視線を送られている。菊池は「(阪神の)本拠地ですが意識しません。そこで戦った先にプロがあると思うので。センバツは好投手が多いと思うけど、その中で自分が一番いい投手だと証明したい」。みちのくの快速左腕が、甲子園のマウンドに舞い戻る。【木下淳】