掛川西(静岡)に15年ぶりの「春」が来た !!

 第81回センバツ高校野球(3月21日開幕、甲子園)の出場校選考会が23日、大阪市内で開かれ、昨秋東海大会準優勝の掛川西の94年以来、15年ぶり4回目の出場が決まった。県勢の公立校のセンバツ出場は、03年の浜名以来。東海大会4強の静清工は落選し、東海地区の補欠1番手となった。

 待ちに待った瞬間が、やってきた。午後3時29分、日本高野連から名倉慎一郎校長(59)に吉報が届いた。校長室に詰め掛けた報道陣のフラッシュの中、校長が「ありがとうございます。謹んで受けさせていただきます」と話して受話器を置く前に、後方のOB会幹部たちが我慢できずにバンザイを始めてしまった。名倉校長は、すぐさまグラウンドに移動。満面の笑みで「おめでとう。3月の試合までけがをしないよう、頑張って練習に励んでください」とナインを祝福した。

 出場校決定時のお決まりの「胴上げ」では、主将の小崎将徳三塁手(2年)が宙に舞った。「オレが甲子園に行くわけじゃない。主役は選手だから」と上村敏正監督(51)が固辞。昨年10月の東海大会2回戦の大垣日大(岐阜)戦で、0-1で迎えた9回裏に逆転サヨナラ本塁打を放ち、この日のおぜん立てを調えた殊勲のキャプテンは「気持ち良かったです。甲子園では、ミスの少ない1点をしっかり取る確実なプレーで頂点を目指します」と声を弾ませた。

 昨秋の新チーム結成から、就任4年目の名将・上村監督の掲げる基本に忠実な全員野球で、粘り強く勝ち上がった。決して下馬評は高くなかったが、試合ごとに成長し、たくましさを増していった。エースの堀野真投手(2年)は「どんな名のあるチームが相手でも、上村先生の野球を貫きます。でも、今のままでは勝てないという危機感はある。エースとして強い気持ちを持って、堂々と投げ抜きます」と熱く誓った。

 古豪復活の1日に、OBたちも歓喜した。98年の夏以来となる甲子園切符に、OB会の松浦靖雄会長(66)は「ずっとこの日を待ちわびていました。OB全員が『ついにまた、甲子園に行けるんだ』と喜んでいます」。1週間前、長年OB会の会計担当を務めた佐々木巳芳さんが79歳で亡くなった。「佐々木さんは『もう1度、掛西が甲子園に行くまでは(会計)辞められない』と言っていた。ちょっとだけ間に合わなかったけど、きっと天国で喜んでいるはずです」。松浦会長は声を詰まらせた。

 これで終わりではない。掛西は、ここまで甲子園では5連敗中。75年春の8強以来、34年間も勝利がない。「思い切り暴れて来たいという思いと、逆に大丈夫かなという不安があります。『出られた』と喜ぶのは一瞬。甲子園では戦いに行かなければなりませんからね」と上村監督。開幕まで2カ月、全国の舞台での快進撃を目指す掛西の挑戦が、幕を開ける。【大石健司】