松井が、ワンバウンドの変化球を“解禁”してセンバツ出場校を手玉に取った。桐光学園(神奈川)・松井裕樹投手(3年)が29日、川崎市内の同校グラウンドで行われた報徳学園(兵庫)との練習試合に先発登板。6回3安打1四球15奪三振の快投を見せ、10-3で勝利に導いた。

 初回2死二塁。報徳学園の4番片浜大輝内野手(3年)に投じた6球目は、黒土が飛び散るほど鋭く落ちるスライダーだった。ワンバウンドする伝家の宝刀で2個目の空振り三振を奪うと、止まらなくなった。6回までの全18アウト中、15個が三振。そのうち見逃しが3個、空振りが12個だった。

 モデルチェンジが成功した。23日に行われた関東第一(東東京)との練習試合では直球主体で9回7安打4失点。強化合宿で疲労がピークの中、直球を狙い打たれて今季初の敗戦投手となった。この日は全99球中10球をワンバウンドさせるなど変化球主体の投球に変更。野呂雅之監督(52)によると、前日28日には、捕手相手にワンバウンドのボールを投げる練習を繰り返していたという。

 松井のワンバウンド投球の秘密を昨年の女房役だった東農大・宇川一光捕手(1年)は「あいつは打者を見てワンバウンドさせるかを決めるんです。打つポイントが遠い打者に対してはベースより手前に落とす。ポイントが近ければベース付近でワンバウンドさせる」と明かす。サインはスライダーでも打者によって変化の仕方を自在に変える。松井の投げるスライダーを止めるため、体中あざが絶えなかったという。

 7月7日の神奈川大会開幕まで練習試合は残り3戦。この日は自己最速タイの147キロも記録するなど、夏本番へ弾みがつく99球だった。【島根純】