<高校野球練習試合:桐光学園7-0浦和学院>

 怪物が日本一をねじ伏せた。今秋ドラフトの目玉、桐光学園(神奈川)・松井裕樹投手(3年)が1日、さいたま市内で行われた浦和学院(埼玉)との練習試合に先発登板。今春センバツ優勝校を相手に1安打無四球、毎回の18奪三振で完封勝利した。わずか108球の快投で、走者を1人しか出さない準完全試合。自己最速タイとなる147キロの直球とチェンジアップのコンビネーションで日本一の打線を手玉に取った。

 松井の投球に日本一の打線が手も足も出なかった。今春センバツ決勝と同じオーダーを組んだ浦和学院を相手に、許した安打はわずか1本の準完全試合。4回に左前打で出した走者も二塁で盗塁死に仕留め、打者27人で試合を終わらせた。

 この日のカギはチェンジアップだった。6回2死。9番打者・服部将光外野手(3年)に対し、ファウルでカウントを稼ぎ、1ボール2ストライクに追い込んでからの4球目。右打者の外へ鋭く逃げるチェンジアップで、空を切らせた。「よっしゃー!」と叫びながらベンチへ戻る左腕からは充実感が漂っていた。

 今春から投球の幅を広げるために磨き上げた変化球で打者を惑わせた。「消える」と評されるスライダーと逆方向に曲がる変化球を使うことで、打者は狙い球を絞れない。2日前の練習試合で6回15三振を喫した報徳学園(兵庫)のある打者は「チェンジアップがあると内にも外にも両方を意識させられるので厳しい。追い込まれるとどちらを狙えばいいか、頭が真っ白になる」と漏らした。

 チェンジアップをより効果的な球にするための探求心も強い。5月下旬の熊本遠征では、この日対戦した浦和学院と同じ宿舎となった。交流を深めたセンバツV左腕・小島のチェンジアップの握りを確認し、インコースの攻め方を聞き出した。松井は「どうしたら球数を減らせるか考えてるんです」と、1学年下の投手からも貪欲に吸収した。

 課題の球数も克服した。6回以降の球数はわずか39球。全て4球以内で三振を奪い、10個の三振を含む12アウトを取った。松井はこの日コメントを残さなかった。野呂雅之監督(52)は「配球の組み合わせなどいいパターンを確認できた。(浦和学院も)ベストに近いメンバーで練習試合を3、4試合やる以上に得たものがある」と手応えを口にした。

 この日の練習試合は6月上旬から約1カ月続いた強化合宿の総仕上げだった。中1日の登板で疲労はピークに近い。それでも7日に開幕する神奈川大会で、準決勝、決勝の連戦を想定した大一番で、最高の投球を見せた。怪物の夏は、誰よりも長くなりそうだ。【島根純】