<高校野球宮城大会:岩出山4-0米谷工>◇20日◇2回戦◇仙台市民球場

 部員11人の公立校のエースが、大仕事をやってのけた。岩出山の最速143キロ右腕・今野龍太(3年)が、今夏初戦で米谷工を相手に9回ノーヒットノーランを達成した。初回2死からの6者連続を含む16三振を奪い、許した走者は四球1、死球3、味方の失策の5人。宮城大会では10年の仙台一・大沼亘投手以来となる27人目の快挙となった。

 伸びのある直球と切れ味抜群のスライダーに、相手打線は手も足も出ない。32人目の打者をこの日16個目の三振に仕留めると、スタンドから歓声が上がった。しかし、今野に笑顔はない。初めて表情が緩んだのは、報道陣のインタビューが始まったときだった。「今、言われて(ノーヒットノーランを)知りました。スコアボードのヒットのところは見ていなくて…。気づいてたらガッツポーズしてたかもしれません」。5年ぶりの初戦突破だけを考えていたナインも、ベンチの1人をのぞいて快挙に気づかないほど必死だった。

 春からの成長を証明した。初回は先頭に9球粘られ、2番打者には頭部への死球。緊張から制球が定まらず「正直あせった」と動揺を隠しきれなかった。それでも、マウンドでは笑顔でストレッチするなど自ら冷静さを取り戻して1回2死からは6者連続三振。6回以降は「下半身が使えるようになって、球が走りだした」と常時135キロ前後をキープしながら、危なげない投球を見せた。

 高い修正能力は、毎日の走り込みの成果だった。技術面でも、30大会ぶりに出場した今春の県大会で甘く入った勝負球を痛打された教訓から「マウンドからホームベースまで線を引いて、上を通す練習をしてきた」と、多いときで1日120球を投げ込んだ。課題だった1、2年生中心の内野守備陣も1日1時間半以上のノックで猛特訓。7回には今野が「今までならヒットだった」という三遊間への打球を、ショート金子智哉(1年)が好捕。下級生もエースをもり立てた。

 部員わずか11人の公立校に現れた大エースは、今秋のドラフト候補に挙がるまでに進化した。ネット裏で見守った楽天上岡スカウトは「去年の秋は公式戦に出ていないのに、大したもんだよ。素材はすばらしいし、球もまだ速くなる」と評価する。目標は過去最高の8強以上。「岩出山旋風、吹かせます」。今野のラストシーズンは最高の形で幕を開けた。【鹿野雄太】

 ◆今野龍太(こんの・りゅうた)1995年(平7)5月11日、宮城県大崎市生まれ。岩出山小2年で岩出山フェニックスで野球を始める。岩出山中3年時に地区大会で無安打無得点試合を達成。177センチ、70キロ。右投げ右打ち。目標はダルビッシュ有(レンジャーズ)。家族は両親、兄、姉、弟。血液型AB。