山梨学院大付が24日、第86回選抜高校野球大会(3月21日から12日間、甲子園)の出場を決めた。山梨1位で臨んだ昨秋の関東大会で4強に入り、20年ぶり2度目のセンバツ切符を獲得。県勢では07年に21世紀枠で出場した都留以来7年ぶりのセンバツ。山梨学院大OBで昨春に就任した吉田洸二監督(44)は、09年に長崎の清峰でセンバツ優勝の経験を持つ。吉田マジックが、1年目で花開いた。

 “吉田マジック”は実在する。2年生が証言する。「監督さんになってから、チームが変わったように明るくなったんです。去年まで、どちらかというと暗かったのですが、きつい練習中にも、大きな声が出るようになりました」。吉田監督は、走るナインのそばで、語りかける。「ここで踏ん張れば甲子園に行けるぞ」。その声に、ナインは発奮した。素直に努力を重ね、チームは20年ぶりのセンバツにたどり着いた。

 09年、今村(広島)を擁した清峰で、センバツ優勝を果たした同監督。豊富な経験を買われ招聘(しょうへい)された。心掛けていることは「人によって態度を変えない。偉い人にへこへこしない。同じ人として接します」。むしろ丁寧な口調で説明する。「(若いころは)高校では、10年連続学校で最も怖い教師に選ばれたんです」(吉田監督)と言うが、23年の教師経験でスタイルを変えた。「今の方が生徒が伸びる」。1年間の成果がナインの信頼だった。主将の菊池海斗内野手(2年)は「監督の言うことって説得力があるし、当たるんですよ」と話した。

 予言が得意だ。昨秋の関東大会、準々決勝だ。1番中堅の金城義外野手(2年)は「2点負けてる7回無死一、二塁です。二塁走者の僕が、けん制アウト。その後、一塁走者の田中もけん制死。ベンチに戻ると監督は『あきらめるな。終盤に3点取って逆転するから』と言ったんです」と言う。2個目のけん制死の田中滉起内野手(2年)は「やべえ、すごい怒られるかなと思ったら、監督は『切り替えろ。反省は試合の後だ』と言うだけでした」と振り返る。試合は監督の予言通りの逆転勝利。この勝利が甲子園を決定付けた。

 甲子園での目標を問われると「1試合でも多く、子供たちと野球がしたい」と同監督。ナインも「1試合、1試合です」と口をそろえる。この意思疎通が強さの源だ。【金子航】

 ◆山梨学院大付

 1956年(昭31)創立の私立校。普通科と英語科があり、生徒数は1144人(うち女子539人)。野球部は57年創部。部員数37人。甲子園出場は春が2度目、夏は5度。主なOBは松本哲也(巨人)内村賢介(DeNA)明石健志(ソフトバンク)萩原智子(水泳)ら。所在地は甲府市酒折3の3の1。古屋忠彦校長。