仙台育英がV3/宮城大会
<高校野球宮城大会:仙台育英1-0東北>◇25日◇決勝
仙台育英が1-0で東北を下し、3年連続21度目の夏の甲子園出場を決めた。2年生エースの穂積優輝が8回途中4安打無失点と好投すれば、8回1死二塁で継投した「肝っ玉1年生」左腕の木村謙吾がパーフェクトリリーフ。昨年の佐藤由規(ヤクルト)のような絶対的なエースが不在の中、学年の垣根を越え一丸となったナインが、ライバル校との接戦を制した。
スーパー1年生は、最後まで笑っていた。わずか1点リードの9回2死。木村はウイニングショットも、強気のストレートで打者の胸元をえぐった。大歓声と悲鳴が渦巻く中、力なく上がった飛球を、加藤一塁手が自軍ベンチ前でガッチリつかむ。両手を大きく広げて絶叫した木村の85キロの体は、飛び出してきた先輩たちに、アッという間にもみくちゃにされた。
「勝利の方程式」ともいえる黄金リレーで、準決勝までの5試合で打率4割1分4厘、42得点の東北打線を沈黙させた。7回まで4安打無失点の先発穂積が8回、1死二塁のピンチを迎える。木村へのスイッチに佐々木順一朗監督(48)に迷いはなかった。「いろんな思いがまだない子」と同監督。入学から4カ月足らずで、伝統の一戦に対する余計な感情が入る余地のない、1年生でただ1人メンバー入りする肝っ玉ルーキーに、後を託した。
木村「後ろの先輩たちがしっかり守ってくれるので、打たれる気はしなかったです。特に怖いこともなかったです」。
同時に交代し、ここまで今大会5試合でバッテリーを組んできた高橋知己捕手(2年)から「スタンドを見ろ。こんなに大勢の中でプレーができるんだ」と言われれマウンドへ。いきなり迎えた強打者の萩野を一ゴロに、続く4番宮下も中飛に仕留め火を消した。9回、先頭打者への2球目には自己最速の135キロをマーク。先輩エースとは、準々決勝から3試合連続の完封リレーとなった。
木村とは対照的に最後はベンチで泣きながら勝利を祈っていた穂積も、萩野との投手戦に屈しなかった。「緊張したけど、みんなを信じて投げました」。2年生ながら昨年のエース由規(ヤクルト)から背番号1を譲り受けた。前日には、観戦に来ていたその由規から「三振は狙わずに、打たせていけ」とアドバイスを受けていた。その言葉通り緩急をつけて低めとコーナーを突き、14個の内野ゴロで東北打線を料理した。
由規という絶対的存在のエースが去り、佐々木監督は結束力の一層の向上を図った。毎週恒例の全員参加型のディベート(討論会)。昨秋からは司会を交代制にし、1年生も3年生も交ぜたグループで、1つのテーマについて討論した。6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震の直後には防災について話し合い、宇宙人の話で熱中したこともあったという。
学年の壁を越えて一致団結したナインは、まずは2回戦で敗退した昨夏の先輩超えを目標に、甲子園へ挑む。元巨人の桑田真澄氏が開会式に訪れるが、木村は「桑田さんも1年生から活躍して、5回も甲子園に出た。僕にもチャンスがありますね。楽しみです」。強心臓の1年生に、夢の舞台が用意された。【由本裕貴】
[2008年7月26日12時35分 紙面から]
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