<全国高校野球選手権:福井商6-1酒田南>◇8日◇1回戦

 酒田南(山形)が誇る2枚エースが、力尽きた。福井商戦で左腕・安井亮輔(2年)が先発し、9回途中8安打5失点で降板。継投した右腕・小山貴史(3年)も1失点し、1-6で完敗した。今夏の山形県大会では交互に完投勝利を挙げ、ともに防御率は0点台。それでも3年ぶり8度目の出場を白星で飾れなかった。山形県勢は2年連続の初戦敗退を喫した。

 9回2死一、三塁。酒田南の安井が流し打った飛球は力なく、左翼手のグラブに収まった。投手として5失点KOされ、9回裏の攻撃では、夏の終わりを告げる最後の打者になった。「悔しさはあったけど、不思議と涙は出てこなかった。なぜか分からない」。泣き崩れることなく、淡々と整列に加わった。視線を下に向けなかった。エース左腕のプライドを漂わせた。

 初回に落とし穴があった。最速139キロの直球で2者連続三振。上々の立ち上がりだったが、2死から1四球と2安打を許し、2失点した。「初回は緊張して力んでしまった。球が高めに浮いた」。大阪府松原市出身。聖地・甲子園の近隣で育ち、あこがれのマウンドに立てた感動で体を震わせた。これが逆効果に働き、奪三振マシンの手元が乱れた。2~7回は無失点投球を続けただけに、初回の乱調が悔やまれた。

 9回先頭で2安打を浴び、小山が継投。2点左前打(自責点は1)を許すなど、福井商の攻勢を止められなかった。「いきなりクイックモーションからのスタートになったので…。7回か8回から投げたかった」と肩を落とした。昨秋に新チームがスタートして以来、両エースの継投は初めて。スクランブル登板は不発に終わったが、小山は「甲子園で投げられて良かった」と本音を漏らした。

 2年生の安井には、雪辱のチャンスが残されている。「もっとコントロールを良くして、低めに集めたい。またこのマウンドに戻ってきたい」と誓った。【柴田寛人】