兵庫の強豪、神港学園には「恐怖の1番打者」がいる。2年生ながらここまで、すでに高校通算46本塁打を記録している伊藤諒介内野手だ。

 ドラフト候補のエース橋本渉(3年)視察に足を運んだスカウト陣が、伊藤諒の打撃に「来年の候補にも要注意」と赤丸をつけた。対戦校の監督は「ものが違う」と舌を巻く。主な高校生打者では最多87本塁打を記録した大阪桐蔭・中田翔(日本ハム)も、2年夏の大阪大会開幕前は41本。試合数など条件の違いはあるが、伊藤諒は本塁打数で怪物・中田をしのぐ。

 1号は入学直後の岡山東との練習試合。満塁で代打起用され、グランドスラムの結果を出した。昨夏の東兵庫大会は3番一塁。だが昨年の本塁打は10本ほど。量産態勢に入ったのは今春の兵庫大会の後だ。

 北原光広監督(55)の長男、直也コーチ(30)の指導で、横から縦振りのスイングをチームで取り入れた。打つ際に腰が開くのを抑えるため、マリナーズ・イチローが次打者席でバットを振る姿をイメージさせた。この練習に熱心に取り組み、才能を開花させたのが伊藤諒だ。

 6月下旬に左足に菌が入り10日間休んだが、7月1日の復帰後3試合で5本と勢いは落ちない。ただ本人は「公式戦の厳しい場面でまだ(本塁打を)打っていない。厳しい勝負で打たなければ」と謙虚に話す。目指すのは、勝負を決する1発だ。【堀まどか】