<全国高校野球選手権:東農大二1-2青森山田>◇16日◇2回戦

 最高の仲間とともに、敗れ去っても聖地で胸を張った。青森山田(青森)は延長戦の末、1-2で東農大二(群馬)に敗れ、5年ぶりの初戦敗退を喫した。右腕エース井上貴滉(3年)が、9回1/3を11安打7三振2失点。延長10回に適時打を浴びて力尽きたが、苦楽をともにしてきたチームメートが立たせてくれた甲子園のマウンドで、120球の力投を披露した。

 マウンドを降りる際、井上は白球を、斎藤英輔投手(3年)に託した。「あとは任せたよ」。1-1の延長10回1死二塁で、甘く入ったスライダーを左前に運ばれ、勝ち越された。無念の交代。悔しさを押し殺し、笑顔でマウンドを譲った。腰痛を抱える斎藤が無失点に抑えると、ベンチで井上は手をたたいて迎えた。

 その裏、攻撃は3人で終わり最後の夏は、あえなく終わった。それでも、仲間と一丸となって出場権をつかんだ聖地で井上が力投した。130キロ台の直球にカーブ、チェンジアップを低めに集める。2回に適時打で先制されたが、打線の援護に恵まれない中、9回までは得点圏に走者を背負う4度のピンチをしのいだ。「この場所で(背番号)1番を背負って、みんなとここまでやってこれたので、良かったです」。その目に涙はなかった。

 県大会でエースの座は斎藤のものだったが、県決勝(対大湊)の好投なども評価され、甲子園での背番号1は井上に与えられた。7月31日のメンバー発表の際には、ナインから拍手を送られた。練習後も1人で走り込みを続けるなど、誰もが認める努力家。昨年12月の修学旅行では、関西出身とあり、積極的に部員仲間を大阪府内などをエスコートし、親交を深めた。青学大に進学する予定の斎藤も「卒業しても気になる存在です」と話した。

 チームは今春の地区予選で敗退し、22年ぶりに県大会出場の道を閉ざされた。どん底からはい上がってきた教え子たちに、渋谷良弥監督(62)は「私は連れてきてもらっただけ。子どもたちに感謝です」と称賛。とりわけ「入学した時は、まさか背番号1をつけるとは思わなかった。頑張ればできるという意味で、ほかの選手や後輩の励みになった」と、井上の活躍をたたえた。聖地で白星を挙げることはできなかったが、井上らナインは「自信」という、かけがえのない財産を得た。【由本裕貴】