取材をする者にとって開幕日の楽しみの1つは、クラブハウスのロッカー位置を確認することだ。新加入の選手は、どのロッカーを与えられているのか。クラブハウスのコーナーや柱などで死角になった場所は通常「良い位置」とされ、主力やベテラン選手に与えられることが多いが、意外な選手が特等席を与えられていたり、逆に主力選手なのにあまり良い場所をもらっていないケースもあり、チーム事情の一端を垣間見ることができる。

 球団によっては、選手が一度割り当てられたロッカーを長年使い続けるのが慣例のところもあれば、頻繁にロッカーを移動するところもある。メッツなどはよくロッカーを変える球団で、昨年は右肘靱帯(じんたい)の手術を受けリハビリ中だったエース右腕マット・ハービーが、先発投手陣が固まっている一角から外れ、リハビリ選手が固まる別の一角を使っていた。

 同じニューヨークでもヤンキースは逆に、ロッカーをめったに移動させない。長年チームで活躍した生え抜きスターが使い続けてきたロッカーを明け渡すのは、引退するときだけだ。今年はチームのレジェンドであるデレク・ジーター氏が引退した後なので、そのロッカーをどうするかがチームでひそかな話題になっている。地元紙によると、ヤンキースの用具担当マネジャーであるロブ・ククーザ氏がキャンプ中、数少ない生え抜きであるブレッド・ガードナーに「ジーターのロッカーに移るか?」と打診したという。ガードナー自身は「ジーターのロッカーはそのまま空けておくべきでは」と遠慮したそうだが、ククーザ氏は「永遠に空けておくことはできない」と後継者探しをしていた。ジーターのロッカーは結局どうなったのか、開幕日のお楽しみだ。