今年4月に正式に現役引退したヤンキースのバーニー・ウィリアムズ元外野手が先日、ヤンキースタジアムで背番号「51」永久欠番のセレモニーを行った。90年代後半から00年代前半のヤンキース黄金時代を支えた主力がここ数年、立て続けに引退しそのたびにセレモニーが行われているが、ヤンキースの引退式や永久欠番式はいつも豪華ゲストが顔をそろえ華やかだ。

 ウィリアムズ氏の永久欠番式にも、豪華ゲストが顔をそろえた。サプライズだったのはデレク・ジーター氏の登場で、昨季限りで引退した後はまったく野球から遠ざかりヤンキースタジアムにもキャンプ地にもいっさい顔を出していなかったため、米国野球シーンに姿を現したのは実に8カ月ぶりのことだった。

 そのためニューヨークのメディアは、何とかジーター氏からコメントを取ろうと待ち構えた。試合前のウィリアムズ氏のセレモニーが終了すると、フィールドからヤンキースのクラブハウス脇を通り裏の通路に出てくるはずだと、大勢の記者がその場所で待機。日本ではこのように待ち構えてぶら下がる方式の取材はめずらしくないが、米国ではまず見られない光景だ。中にはなぜそこで待ち構えているのかよく理解せずに、みんながその場にいるので取りあえず自分もという記者もいた。

 ともあれ米国記者は慣れない「出待ち」をしばらく続けたが、結局ジーター氏はつかまらず。同氏はその日の主役のウィリアムズ氏に気を使って表に出てこなかったのだろうが、現役時代から報道陣を手玉に取るのがうまかったジーター氏らしく、見事な隠密行動で会場から消えていた。今年はヤンキースタジアムで8月22日にホルヘ・ポサダ氏の「20」、8月23日にアンディ・ペティット氏の「46」の永久欠番式が行われる。豪華なセレモニーの舞台裏でどんなシーンが繰り広げられるのか。取材する者にとってはそれも楽しみのひとつだ。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)