マーリンズのホセ・フェルナンデス投手が突然のボート事故で亡くなったニュースは、あまりにも衝撃的だった。まだ24歳ながらメジャーを代表する大エースというだけでなく、喜怒哀楽を顔に出す素直な性格から、愛されキャラとしても知られていた。多くのメジャー記者が今、ホセフェルを追悼する記事を書いているのではないかと思う。私も書かずにはいられない。そういう選手だった。

 ホセフェルの、最後の試合になってしまった9月20日の本拠地マーリンズパークでのナショナルズ戦は、ちょうど現地で取材をしていた。8回をわずか3安打、無四球に抑え、無失点で12奪三振をマークする完璧な投球だった。マーリンズパークのホームクラブハウスの入り口脇には小さな会見場があり、そこは毎日、試合後の監督会見に使用されていて、他の目的ではほとんど使われないが、ホセフェルが勝ったときだけは監督会見の後にホセフェルの会見がそこで行われる。彼が登板する日にはキューバの報道陣が何人も来るため、人数の多さに配慮し会見場を使っているのだと思う。マイアミはキューバ移民の街でもあるが、彼ら移民にとっても本国キューバの人々にとっては、ホセフェルは夢と希望の象徴だったのだろうと思うし、マーリンズという球団にとっても特別な存在だった。

 その最後の登板の日も、ホセフェルはその部屋で会見をした。今季ベストといってもいい登板の後だけに、実にいい表情をしていた。最後の報道陣とのやりとりは「これが今季最後の登板になるのか?」という内容だった。肘の靱帯(じんたい)手術から復帰し2年目になるホセフェルにはまだ投球回制限が必要ではないかという話が出ており、残りのシーズンは登板を回避する可能性もあるのではといわれていた。ホセフェルは「分からない。僕は監督じゃないから」と答え、それが会見での最後の言葉だった。まさかそれが今季最後どころか人生最後の登板になってしまうとは、誰が想像しただろう。9月25日は、ホセフェルを知っているすべての人にとって、あまりにも悲しい日になった。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)