日本ハムからポスティングシステムでメジャー移籍を目指す大谷翔平選手が一体どのチームに入るのか、大きな注目を集めている。

 米メディアによると1次選考で実際に球団を売り込むための書類を大谷側に提出したのは27球団あったという。その27球団の中には、自分たちが選ばれる可能性は低いだろうと自覚しながらも2次選考である直接面談の準備を進めていた球団も多かった。「たとえ可能性が低くてもアクションを起こすことが自分の務め」というのが、多くのメジャー球団幹部の感覚だったようだ。

 メッツもそんな球団の1つだった。1次審査の書類選考の段階であえなく落選となったものの、2次審査の直接面談にそなえ、プレゼン用のビデオをすでに制作していたという。11月のGMミーティングではサンディ・アルダーソンGMが獲得競争の参戦を明言し「メジャーでの二刀流挑戦は、見ている方も楽しい。野球もエンターテインメントなんだよ」と話していた。

 メッツといえば、NFLの人気選手から野球に転向したティム・ティーボウと今年初めにマイナー契約を結び、プレーさせていた。契約当初は「客寄せパンダなど必要ない」と批判されたが、ティーボウが出場するマイナーの試合は観客が大幅に増え、ティーボウ自身は周囲が期待していた以上に努力を重ねて野球選手として成長を見せ、批判されたティーボウ獲得が結果的に成功していた。

 今年の夏ごろ、あるメッツ関係者に大谷に興味はないのかと聞いたら「私もGMに獲得にいくべきと言ったが、高いだろうと受け流された」と話していた。その頃はまだ、ポスティングシステムがどうなるか不透明だったこともあり、自分たちには手が出ないものと思い込んでいたのだろう。秋に多くのメジャー球団がGM自ら来日し大谷を視察していたときも、アルダーソンGMもその他球団幹部も来日することはなかったので、メッツは興味がないものと思っていた。だが、ティーボウの成功から、他の選手がやらないような挑戦をする選手を抱える球団としてのメリットを実感したのかもしれない。獲得競争に大幅に後れを取っていたため獲得の可能性については現実的に受け止めていたが、獲得競争に加わること自体がファンへ夢を与えることにもなるとも考えていたようだ。別の球団のGMの中にも「よその球団に入ったとしても、二刀流が成功するのか見るのは楽しみだ」と話していた人もいた。大谷獲得競争は球団にとって参加することに意義があった、ひとつのイベントだったのかもしれない。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)