メジャーには「2番最強説」というのがあるが、選手自身は2番に入ることを望んでいるかといえば、そういうわけでもない。2年前に62本塁打でア・リーグ本塁打記録を塗り替えたヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(31)は、実は3番を打ちたがっているという。ここまでの通算835試合出場の中で2番が528試合と圧倒的に多く、昨季は3番に入ったのがわずか2試合しかなかった。本人にとってはこれが不本意だったようだ。

ブーン監督はこのキャンプ序盤に「もう6年くらい前から3番にしてほしいと言われ続けている。今季はついに、その願望をかなえてやれるかもしれない」と明らかにしており、言葉通りこのオープン戦の最初の試合でもジャッジを3番に据えた。ヤンキースはオフの間にフアン・ソト外野手(25)をトレードで獲得しており、出塁率の高いソトを2番に置き、ジャッジがその後に続くというのが同監督の構想だ。

どうしてそんなに3番が打ちたいのかと問われたジャッジは「古い考えかもしれないが、僕が子供の頃は3番に最強打者が座り、3番と4番は打点を挙げる役だというのを見て育ってきた。どういうわけか3番にこだわりがある。自分の打席の前に走者が2人出たら、もっと点を入れられると感じている」という。

サンフランシスコ近郊で少年時代を過ごしたジャッジはジャイアンツのバリー・ボンズ外野手の活躍を間近で見ており、当時のMLB最高打者だった彼ははやり3番だった。今も、フィリーズのブライス・ハーパー内野手(31)、ブルージェイズのウラジーミル・ゲレロ内野手(24)といったトップクラスの打者の何人かは3番がほぼ定位置になっている。

そもそも2番最強打者説というのは、一番いい打者に1打席でも多く打順を回したいという狙いからきている。選手層が厚くトップクラスの打者が3人以上いるチームなら、1~3番の打者の能力にそれほど差がない場合もあるし、打点を挙げる能力がより高い選手が3番に入る。ジャッジは22年に自己最多の131打点で打点王に輝いているが、構想がうまくはまれば3番でさらに多くの打点をたたき出すかもしれない。

ところで大谷翔平投手(29)が加入しメジャー屈指の打線を誇るドジャースでは、大谷が3番かともいわれている。大谷のこれまでの最多打点は21年の100だが、ベッツやフリーマンの後ろを打つとなれば、打点は相当伸びるのは間違いない。MLBのシーズン最多打点記録は1930年のハンク・ウィルソン(カブス)の191だが、21世紀に入ってからはサミー・ソーサ(同)が2001年に記録した160が最多。これに迫るくらいの数字を期待できるかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)

ドジャース大谷翔平(2024年2月撮影)
ドジャース大谷翔平(2024年2月撮影)