大谷翔平投手(29)がドジャースに入団してから、ハイテクギアを目にする機会が増えた。ダッシュのときに上半身に装着している「デジタルブラジャー」は走行距離とスピード、心拍数が計測でき「ハイテクサングラス」は心拍数や走行距離が目の前に表示されるという。資金力豊富なドジャースだけあって、最先端機器が充実している。

そこで他の球団はどうだろうと調べてみると、現在のMLBは、急速にハイテク化が進んでいる。例えば米テクノロジー専門サイトの「テククランチ・コム」によると、専門施設「アップリフト研究所」が開発した3D動作解析機器は、MLB球団のうち3分の1以上が導入しているという。これはAIを駆使した動作解析を高性能カメラで行い、iPhoneやiPadで確認することができるもの。例えば投球動作を撮影すると、踏み込んだ際のストライドの長さや膝の曲がり角度などが瞬時に表示される。

今は「研究部門」を持つ球団も増え、例えばブルワーズは2019年、アリゾナ州のキャンプ施設に6000万ドル(約90億円)をかけて野球研究所の施設を完成させ、さまざまなハイテク機器を完備している。パドレスも今年2月、ポイントロマ・ナザレン大学と協力し大学内に生体力学を中心とした研究所をオープンさせた。そこにはトラックマン、ブラストモーション(打撃スイングの解析)、ヒットトラック(ハイテク打撃ケージ)、エッジャートロニック(ハイスピードカメラ)などあらゆるハイテク機器が完備されている。パドレスのジョシュ・ステインGM補佐は研究所オープン時のセレモニーで「研究部門は現代の選手育成で非常に重要。これによって選手は動作を解析し運動連鎖の仕組みを理解することができる。このような施設は、選手の能力を伸ばす上で大変有利になる」と胸を張っていた。

この他、最近ではオリオールズは2022年に地元医療機関と共同で投球研究所を設立。米スポーツメディア「ジ・アスレチック」の昨年12月の記事によると、MLB30球団の中で約半数は独自または専門機関と共同の研究部門を持っているという。

ドジャースもこの春、アリゾナ州グランデールのキャンプ施設の中に約1100平方メートルで3階建ての研究室を新築しオープンしている。そこに科学、科学技術、工学、数学の専門スタッフがそろい、パフォーマンスイノベーションが行われているという。大谷が昨季まで所属していたエンゼルスはMLBの中では研究や分析分野で後れを取っている球団だがドジャースは最先端を行っており、大谷にとってはそうした環境面も大きく変わった。今季は大谷とハイテクイノベーションの融合が見られることになりそうで楽しみだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)

練習中にサングラスをかけるドジャース大谷(2024年3月撮影)
練習中にサングラスをかけるドジャース大谷(2024年3月撮影)