マーリンズのイチローが、またしても大記録に近づいています。日米通算安打が、メジャー史上2位のタイ・カッブに着々と迫っているのですが、このカッブの記録が、実は2つ存在するのです。米国の野球データ調査会社によって「4191」「4189」に分かれており、果たしてどちらが正解なのでしょうか。

 この2本の誤差は、1910年の記録から生まれたものでした。当初は196本とされ、カッブは打率3割8分5厘で首位打者に輝きました。ところが、後年、過去の記録をひもどいたスポーツ雑誌社が、この年の集計ミスを発見し、194本だったと指摘したのです。

 では、なぜ、今もなお、修正されていないのかといえば、その裏にも事情がありました。2本減らした場合、カッブの打率は3割8分3厘となり、3割8分4厘だった2位ラジョイに逆転されてしまいます。本来であれば、そうすべきなのでしょうが、ラジョイが最終日のダブルヘッダーで8安打した裏には、相手チームによる明らかな八百長行為があったというのです。実際、八百長に関与した相手監督らは永久追放などの処分を受けています。そんなこともあり、歴史を汚すわけにもいかず、大リーグ機構側は、今も当初の成績から変えようとはしていません。

 今回、イチローの記録が近づいたこともあり、マーリンズの広報部に確認したところ、機構側の公式データ会社「エリアス・スポーツ・ビューロー」に従い、「4191」が公式記録として認定されているとのことでした。

 ちなみに、まったくの余談ですが、かつて「タイ・カップ」と呼ばれていた名前も、近年では英語の発音により近づける意味でも「カッブ」として落ち着いているようです。

 本来、アルファベットのスペリングは「Cobb」ですから、それがなぜ「カップ」と表記されたのか。それもまた、不思議な気もするのですが…。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)