来季のメジャーの公式戦日程が、このほど正式に発表されました。その中には、イチローが所属するマーリンズが、パイレーツと5月30日から2日間にわたってプエルトリコでプレーする日程も組み込まれました。プエルトリコといえば、かつてパイレーツで活躍し、1972年にニカラグア大震災の支援活動の際、飛行機事故で他界したロベルト・クレメンテの母国。同期間には、その英雄をしのぶ「ロベルト・クレメンテ・デー」の式典も予定されています。

 その一方で、米国、カナダ以外での公式戦開催は、MLB機構が推進する国際戦略の一端でもあります。初開催となった1996年のメキシコをはじめ、日本(00年、04年、08年、12年)、プエルトリコ、オーストラリアで公式戦を開催するなど、米国球界は早くから海外進出に取り組んできました。前コミッショナーのセリグ氏からバトンを引き継いだマンフレッド氏も、MLBの国際化には積極的で、市場拡大、新規開拓には並々ならぬ意欲を見せています。

 現時点で、最大のターゲットに挙げられているのが、野球の途上地域と言われるヨーロッパです。すでに担当者が現地関係者との折衝に入っており、2017年にはロンドンでの開催を目指していると言われています。12年のロンドン五輪のメーン会場となり、現在改装中の「オリンピック・スタジアム」を使用する方向で、5万人以上の集客を見込んでいるようです。フットボールのNFL、バスケットのNBAがヨーロッパ開催で一定の成果を挙げていることもあり、MLBも本格的に動きだしたというわけです。

 来年にはキューバでのオープン戦を計画しており、今後は中南米、アジアへの進出を視野に入れているようです。将来的には、エクスパンション(球団数拡大)も検討課題とされており、ラスベガス、オクラホマシティなどの米国内だけでなく、モントリオール(カナダ)、メキシコシティ、などの国外を含め、候補地の具体的な調査に進展する可能性もありそうです。

 約5000億円とも試算されるほど市場規模が広がった米球界-。

 それでも、依然として底辺拡大、発展への道を探り続けています。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)