新年が明けた米国では、1月20日に大統領に就任するドナルド・トランプ氏の政策に注目が集まっています。経済、外交などさまざまな政策の行方は現時点で不透明ですが、同氏の言動は、野球界にも影響を与える可能性があるとの意見も聞こえています。

 特に、注視されているのが、現在約1200万人とも言われる不法移民の問題です。すでに同氏は選挙期間中から不法移民(特にメキシコ)の追放を公約に掲げたこともあり、一部のラテン系選手から反発を受けました。さらに、同氏は国交が回復したキューバとの関係も見直す方針を持っていると言われています。

 言うまでもなく、メジャーでは多くの「外国人」がプレーしています。彼らは正式なビザやグリーンカード(永住権)を取得して各球団に所属しており、法律上、まったく問題はありません。その一方で、彼らの親族や知人に不法移民が含まれている可能性も否定できません。これまで亡命以外に移住の手段がなかったキューバ人選手にすれば、ようやく国交正常化への動きが進展し始めた直後に方針転換されるとすれば、死活問題にも直結しかねません。

 これまで野球界はホワイトハウスとの間で、良好かつ緊密な関係を築いてきました。第43代大統領のジョージ・W・ブッシュ氏は、かつてレンジャーズの共同オーナーを務めたこともあるほどで、大の野球ファンとして有名でした。今回退任するバラク・オバマ氏はホワイトソックスのファンとして知られ、始球式を行った2009年のオールスター(セントルイス)ではイチローとも対面。昨春、キューバを訪問した際には、球場で試合観戦し、両国の関係修復を世界中に示しました。また12月28日、ハワイ・真珠湾で行われた日米首脳会談後のスピーチでは、日米両国の平和と友情の一例として「マイアミのスタジアムを沸かせているイチローのような野球選手もいる」とスピーチするなど、野球界とのつながりを大切にしてきました。

 現段階で、トランプ氏の政策が、野球界にどのような影響を与えるかは不明です。ただ、移民対策の一環として、ビザ発給や永住権取得が制限されるようになるとすれば、現在約27%(2016年開幕時)を占めるメジャーの外国人選手、さらには今後メジャー挑戦を目指す選手にとって障壁になる可能性も捨てきれません。コミッショナーのロブ・マンフレッド氏は「今後数年間は心配していない」と話していますが、過激で流動的な発言で知られるトランプ氏だけに、その言動からは、野球関係者にとっても目が離せないことになりそうです。