いよいよ始まった2016年ワールドシリーズ。第1戦はインディアンスが6対0でカブスをシャットアウトしてのスタートとなった。今回のワールドシリーズはアメリカのメディア、広告業界からこれまで以上に大きな期待が寄せられている。ここ数年低迷気味だったテレビ中継の視聴率が回復するだろうと予想されているのだ。実際、調査会社ニールセンの発表によると初戦の総視聴者数は1937万人で視聴率は5・6と、ワールドシリーズ初戦としてはここ7年間で最高の結果が出ている。

 両チームの本拠地はいずれも中西部のシカゴとクリーブランドということで単純に考えると関心が狭い地域に集まり、興味を持つ人々が減ってしまうと考えがちである。だが逆に増加しているのだ。

 その大きな要因としてまず挙げられるのが、カブスの持つストーリーだ。カブスが“呪い”を破って実に71年ぶりにワールドシリーズに進出したことである。

 日本でも報道されているがカブスには2つの呪いがかけられていると言われてきた。1つ目は「山羊の呪い」である。1945年のワールドシリーズ第4戦でビリー・サイアス氏がマーフィーという名の山羊を連れての入場を拒否され、「カブスは2度と勝てないだろう。リグレー・フィールドにヤギの入場が許されるまで、カブスは2度とワールドシリーズに勝てない」と言い放ったというものである。そのシリーズでカブスは敗退し、以後今回までシリーズ進出できなかった。

 2つ目は「スティーブ・バートマンの呪い」である。2003年のナ・リーグ優勝決定シリーズ第6戦でカブスはリーグ優勝までアウト5つに迫っていたのにもかかわらず、観戦に来ていたスティーブ・バートマン氏がファウル打球の妨害をしてしまった“事件”をきっかけに敗退につながったというものである。その後バートマン氏への誹謗中傷が集中し、妨害を受けたボールが爆破されるなど社会的な問題となったこともあって2つめの呪いと認識されていたのだ。

 この2つの呪いは全米に広く知られたものであり、それだけに今回の進出による関心は近年になく高く、MLBに関心の低いカジュアル層も中継を観るだろうと期待されているのである。しかももしカブスが優勝すれば実に108年ぶりだ。

 シカゴは元々全米第3の大都市ということもある。人気という点ではホワイトソックスと二分している。しかしホワイトソックスのファンでも先のストーリーがあるのでカブスに肩入れするだろうと見られている。

 対するインディアンスだが、カブスのストーリーに比べると見劣りするのは事実だが、それでも優勝すれば68年ぶりとなる点は大きい。

 やはり飛び抜けたストーリーや数十年ぶりの快挙、は多くの人を引きつける魅力となるようである。