ヤンキース田中将大投手(26)がブレーブス戦で7回を5安打3失点で10勝目(6敗)を挙げた。序盤に失点する苦しい立ち上がりも、持ち前の高い修正能力を発揮。野茂、松坂、ダルビッシュに次ぐ日本選手4人目となるデビューから2年連続の2桁勝利を達成した。

 いつもは冷静沈着な田中が、珍しくバタついた。前の試合まで低調だったヤンキース打線が、1回表に大量5点を先制。攻撃が直前の8番打者で終わり、慌ただしくヘルメットや肘当てを外す。急ぎ足で初めて踏む敵地ターナーフィールドのマウンドへ向かった。その間、今季から適用された「時短ルール」により、2分30秒に設定された時計は、刻々と時を刻んでいた。

 先頭への安打をはじめ、4番までに、わずか12球で2点を失った。「(打席に入る)直前でイニングが終わってバタバタと準備して…。登板前は大丈夫と言ってたんですけど、もろに影響しましたね」。慣れない交流戦のリズムに戸惑い、立ち上がりに乱れた。

 2回表には再びヤ軍が猛攻を展開し、プロで初めて1イニング2打席を経験した。水を飲む間もなく、初回と同様の慌ただしさの中でマウンドに立った。それでも、この回はきっちりと立て直し、速球主体に3者連続三振を奪った。

 田中 今年は自分の中での理想ばっかりにいってたような気がして…。捕手が構えているところに投げるためにはどうすればいいかを、突き詰めた。むちゃくちゃと言ったら語弊がありますけど、今まで投げたことのないような投げ方で投げました。

 3回にソロ本塁打を許したものの、その後は13人連続で凡退に仕留めた。宝刀スプリットは複数の握りを駆使して落差を調整し、スライダーも意図的に肘の高さを変え、軌道やスピードに変化を加えた。バックスイングでは右手首をロックするように固定するなど、理想に固執することなく新しい形を模索。あらためて高い修正能力を披露した。

 終わってみれば、野茂らに並ぶデビューから2年連続の2桁勝利をマーク。ヤ軍でもペティットら過去7人しか達成していない。「先輩たちに続けたことは良かったですが、まだまだ内容は遠く及ばない。しっかりと突き詰めてやっていきたいと思います」。常に進化を求め、変化を恐れない。今後を語る田中の口調は、バタつくどころか、落ち着き払っていた。【アトランタ(米ジョージア州)=四竈衛】

 ▼田中が10勝目。日本人投手の2年連続2ケタ勝利は野茂(3年連続を2度)伊良部、大家、松坂、黒田(5年連続=日本人最長)ダルビッシュ、岩隈に次いで8人目。新人年からでは野茂(3年連続)松坂、ダルビッシュ(3年連続)に次いで4人目。