逆境を力に変えた。ドジャース前田健太投手(28)が28日、6戦ぶりの勝利投手に輝いた。メッツ戦に先発も初回、2死で3番コンフォートの強烈な打球が右手甲に当たり、内野安打になるアクシデント。手を押さえてしゃがみ込む前田の表情はゆがみ、首脳陣やトレーナーが駆けつけて試合が中断した。しかし数分後にはマウンドに戻り、直後はボールが6球続くなど苦労しながらも、2回以降は無安打。5回無失点で4勝目を手にした。

 試合中に痛みは強くなり、チェンジアップの制球にも苦しんだ。だが「ボールが当たったことで、逆に集中して丁寧に投げられた。気持ちがもう1段入った」と気力で乗り切った。メ軍とは11日にも対戦し、まさかの2本塁打を浴びたシンダーガードがこの日もマウンドにいた。ところが3回、その剛腕はアットリーへの危険球で一発退場に。昨年のプレーオフでの危険スライディングが伏線となっており、不穏なムードが漂った。前田も球審から注意を受けたが、「打者の苦手なところや抑えたコースも頭に入っていた」と対戦経験を生かし、集中力を切らさなかった。

 4月23日ロッキーズ戦まで3連勝と快調なデビューを飾ったが、1カ月以上も勝てない時期が続いた。「少し苦しい思いをしたが、それを覚悟の上でこっちに来たので。久しぶりにピッチングについて考えることができた時間になりました」。大事を取り75球で降板後に検査を受け、骨に異常はなかった。ロバーツ監督は「彼はガッツと強いハートで5回を投げた。次の登板も大丈夫だろう」と、変わらぬ信頼を口にした。(水次祥子)