プレーバック日刊スポーツ! 過去の1月27日付紙面を振り返ります。2001年の1面(東京版)はマリナーズ・イチロー外野手がマ軍若手選手からせん望のまなざしと報じています。

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 【ピオリア(米アリゾナ州)25日(日本時間26日)】米大リーグ、マリナーズ・イチロー外野手(27)が、マ軍若手選手からせん望のまなざしを向けられた。

 この日、キャンプ地の当地での自主トレを開始。打撃ケージで150スイングのフリー打撃や屋外での外野ノックなど約3時間30分、体を動かした。振り子打法から放つ痛烈な打球で居合わせたマイナー選手の視線をくぎ付けにし、キャッチボールをせがまれるなど早くも格の違いを漂わせた。 

 躍動するイチローに、マリナーズの若手の視線はくぎ付けになった。寒いシアトルから、昼間の気温は20度を超えるキャンプ地ピオリアに移動して2日目。青空の下、メジャー移籍後初めて外野ノックを受けると、室内ブルペンの広さほどの打撃ケージに入り快音を響かせた。

 打撃投手を買って出た左投げのデーブ・ブランデージ2A監督、右投げのパット・ライス投手コーディネーターを相手に、20球打ってはインターバルをとるペースで打ち込んだ。軽い振り子でタイミングをとりながら、1球1球フォームを確認しながら打っていく。打ち損じはほとんどなし。痛烈なライナー性の当たりが約150スイング分、周囲を囲むネットを突き刺していった。

 イチローの名前は、すでにチーム内に知れ渡っている。だが初めて目にする振り子、確実にボールをとらえる技術に居合わせた10人のマイナーリーガーたちは自分の練習をやめて見入った。フォームをまねながら話し込んだり、球団関係者を通じてイチローに話しかける選手もいた。

 今季1Aから昇格を目指すPJ・ウィリアムス外野手(23)は「素晴らしい打撃に見とれてしまった。彼とは同じ外野手だし、あこがれのメジャー選手だから」。同外野手はキャッチボールの相手まで願い出て実現したが、ここでもイチローが圧倒。徐々に距離を開きながら地面と平行ともいえる鋭い送球を続け、最後にはウィリアムスが肩痛からの病み上がりだったこともあり、音を上げてしまった。

 他のメジャーリーガーでは投手でガルシア、クラウド、メッシュ、野手でもバイエガが練習していた。が、マイナーリーガーたちはイチローから離れなかった。自主トレ中で砂漠の真ん中という地理的な条件もあり、ファンは数人しかいなかったが、イチローの周りだけはにぎやかだった。

 イチローは「彼らは僕じゃなく、報道陣(の多さ)が気になっていたようですよ」と照れた。だが、たった1人だったシアトルと違う練習環境は刺激になるかとの問いには「それはないです。まあ、1人でできない練習をやれるのはいい点ですが」と間髪を入れずに答えた。周囲がどうあろうと、メジャーリーガーとして自分がやらなければいけないことがある。

 実はのんびり過ごすはずの前日も、練習施設に立ち寄っていた。「ちょっとしました」とバットを振ってみた。そしてこの日のキャンプ地トレ本格始動に「やはり気持ちいい。来て良かったです」と笑顔で話した。

 “お客さん”としてマ軍キャンプに参加してから2年。同じ場所で、メジャーリーガーとして汗を流していく日々がスタートした。

※記録と表記は当時のもの