<オープン戦:ロッキーズ4-1マリナーズ>◇11日(日本時間12日)◇アリゾナ州トゥーソン

 【トゥーソン(米アリゾナ州)11日(日本時間12日)=木崎英夫通信員】マリナーズのイチロー外野手(34)がトンネルから抜け出せない。ロッキーズ戦で投ゴロ、左飛、左飛、三ゴロの4打数無安打に終わり、オープン戦ながら自己ワーストの26打席連続無安打となった。05年の公式戦で記録した24打席を超え、23打数無安打も同時期の22打数を更新した。

 ひそかな予感も完ぺきに裏切られた。ロ軍先発は昨季リーグ4位の17勝を挙げ、ワールドシリーズ進出の原動力となった長身左腕のフランシス。

 第1打席、イチローは外寄り低めの速球を鋭い当たりで打ち返したが、打球はワンバウンドしてフランシスのグラブへスッポリ収まった。2打席目は外のスライダーを打って左飛に終わる。そして、2番手ハージスに代わった第3打席だった。またも左飛に倒れ、25打席連続ヒットなし。この時点で05年の公式戦で残した自己ワーストを超えてしまった。9日のブルワーズ戦では可能性もあった遊ゴロに「アウトになれと思って走った」だけに、この日の各打席には胸のすくような1本の期待は膨らむ一方だった。

 「悪いことはつくっとかないといけないですからね。とってもいいんじゃないの」。自己ワースト更新を聞かされると、おく面もなく言い放った。調整段階にある時期にウミを出せることはシーズンを見据えれば決してマイナスには働かない。

 もっとも、相手あっての実戦だからこそ、過程だけでなく答えも必要になってくる。「結果は求めてますよ、いつも。求めてないことはないですよ。いつも両方(過程と結果の比重は)強いね」。

 この日の最終打席、外角低めの速球にきっちりタイミングを合わせた打球は三塁手の正面へと転がった。連続26打席無安打。静観してきたシアトルの米メディアも、この日はイチローを約10分間、取り囲んだ。ここまで打たないことの方が難しいとさえ思わせる異能の打者は、狭いビジターのロッカールームで本音を漏らした。「1本出しにいってるよ、うん」。うっすらとサングラスのあとが着いた日焼けした顔が引き締まった。