<レッドソックス4-5レイズ>◇9日(日本時間10日)◇フェンウェイパーク

 【ボストン(米マサチューセッツ州)=四竈衛、山内崇章】岩村レイズが松坂も、試合もひっくり返した。レイズがレッドソックスに逆転勝ちで首位を守った。0-1とリードされた3回、岩村明憲選手(29)が松坂大輔投手(27)の意表を突くセーフティーバント。バランスを崩した松坂はあおむけにひっくり返り、そこから逆転されて5回0/3を8安打3失点で降板、17勝目はならなかった。レイズは8回に逆転されても、9回土壇場でパペルボンを打って再逆転、1・5差にした。球団創設以来の初優勝へ大きな1勝だ。

 1点をリードされた3回表、岩村が試合を動かした。先頭打者として松坂を崩す策に、ためらいはなかった。初球を三塁前へセーフティーバント。あわてて三塁前へダッシュしようとした松坂はスパイクを滑らせてマウンドであおむけにひっくり返った。あっけにとられる満員の観衆。俊足岩村は一塁ベースを駆け抜けていた。「大輔にも意表を突けるんじゃないかと思ってね」。これを機に、松坂はリズムを崩した。連続3四死球で押しだし同点、さらに犠飛で逆転に成功。レッドソックスの勢いを松坂ごとひっくり返した「岩村の殊勲の一打」だ。

 思い付きではなかった。この日のボストンは、午後から小雨が降り続き、グラウンドはたっぷりと水分を含んでいた。「転がせば(打球が)死んでくれる」。三塁手ローウェルが浅めの守備位置だったのも頭に入っていた。それでも安打になると計算していた。「僕も(昨季までは)三塁手。相手の嫌がることは分かってますからね」。4連敗中のレイズは、直前まで20回連続無得点。豪快な一発以上に、糸口が必要だったのだ。「できるだけ早い回に大輔を苦しめる展開にしたい」と話していた通り、足元から揺さぶった。「大輔も自分の17勝目よりもチームの勝利を考えていたはずだ。それをチーム一丸となって崩せたのは、僕らにとって大きな収穫です」。試合の重み、流れを読める岩村の貢献度は、松坂から奪った2安打だけでは測れないほどだ。

 首位攻防戦を前に、体調は万全ではなかった。遠征前から、せきを伴う風邪に襲われた。だが本来は休養予定の7日も、連敗中とあってマドン監督に出場を打診されると、当然とばかりにプレーした。「こんな緊張感の中で試合ができるのは幸せなことですから」。

 レイズは8回2死から2ランを浴びて逆転された。だが、9回、相手守護神パペルボンを打って再逆転、7連敗中だったボストンで今季初白星。1・5差に広げた。「今年の中で5本の指に入る試合。明日もやりやすい状態でやれると思います」。しびれるような試合をものにした後、岩村の表情はいつしか、キリリと引き締まっていた。【四竈衛】