大リーグは14日(日本時間15日未明)、30球団のうちレッドソックス、ヤンキースなど16球団のバッテリー組がキャンプインした。フロリダでは新日本石油ENEOSからレッドソックス入りした田沢純一投手(22)は、エプスタインGM、フランコナ監督、ファレル投手コーチが見守る中、ブルペンで53球を投げ込んだ。

 田沢が、メジャー第1歩を踏み出した。午前9時20分、背番号「86」の赤いユニホームでクラブハウスからグラウンドに出てきた。ストレッチ、キャッチボール後にはブルペン入り。マウンドで一礼すると、ブラウン捕手のミットめがけてテンポ良く投げ込んでいく。エプスタインGM、フランコナ監督、ファレル投手コーチの視線を一身に背負った。直球41球、変化球12球。指揮官からは早くも「TAZ」と愛称で呼ばれ、約15分の投球練習後、がっちりと握手した。

 決して自分で選んだわけではない背番号「86」。生まれたのは1986年で、偶然にも一致していた。「ちょっと重い番号だけど、最初にもらった番号なんで86でいいな」と笑顔を見せた。新日本石油ENEOSでは「17」を背負っていただけに、複雑な思いもあった。招待選手も含め、キャンプに参加する投手陣の中では、一番大きな番号だ。ロッカーも人通りの激しい入り口近く。メジャー契約を結んだとはいえ、扱いは完全に“新人”だが、2Aから育成するのが球団の方針だ。

 前日には、身体検査や体力測定とともに、フランコナ監督、ファレル投手コーチ、エプスタインGMと個人面談が行われた。その席でも「焦らないように」伝えられたという。2日前には「(斎藤)隆さんに『こういうのを見て勉強していこう』って声を掛けてもらいました」と、ブルペンで投げるベケットをじっくりと観察。豪華な“教材”から、学べるものはすべて学んでいく。

 日本人メジャーの“パイオニア”的な存在だった野茂英雄が引退。入れ替わるように、日本のプロ野球を経ずにメジャーの夢を切り開いた22歳が、ゼロからのスタートを切った。(フォートマイヤーズ=佐藤直子通信員)