<米独立リーグ:スコーピオンズ5-6アーマダ>◇5日(日本時間6日)◇アリゾナ州ユマ

 【ユマ(米アリゾナ州)=佐藤直子】米独立リーグのアーマダで現役復帰した伊良部秀輝投手(40)が、復帰戦で初白星を飾った。味方の失策に足を引っ張られながらも、5回を6安打4失点(自責点2)、6奪三振で勝利投手となった。最速で92マイル(約148キロ)をマークするなど、4年のブランクを経ても剛腕の面影は失ってなかった。テンプルトン監督は「メジャーのどこかで投げても、おかしくはない」と、メジャー復帰も夢ではなくなってきた。

 復帰戦の第1球は速球でストライクだった。「緊張しました」と久々の実戦に苦笑いだったが、マウンドでは自然とアドレナリンが全開だった。持ち味の速球と遅いカーブで緩急の投球を展開。かつて158キロをマークした球速は、最速92マイル(約148キロ)まで回復した。平均でも90マイル(約145キロ)を記録し、4年間のブランクは感じられなかった。

 失策が絡んで初回に2失点したが、なお1死満塁のピンチでは連続三振で切り抜けた。2、3回は合計26球であっさり締めた後、4回に再び味方失策もあって2点を献上したものの、5回は3人で抑え計88球でマウンドを降りた。伊良部は「点も取られてヒットも打たれたけど、半分を投げられたんでよかったと思います。ストレートが90マイル台平均で出ていれば十分。あとは制球と緩急をつけて投げるというのが課題ですね」と笑顔を見せた。

 常勝時代のヤンキースでプレーしたが、日本球界に復帰した04年に阪神から戦力外通告を受け、引退を決意した。それでも野球への情熱が薄れず、今年1月中旬から練習を再開。手術した右ひざの負担を軽減するために、軸となる右足の使い方を変えた。以前は左足を上げる際に右かかとも上げていたが、現在は地面につけたまま。阪神時代には約110キロあった体重も90キロ台に絞って、腰の回転も鋭くなった。

 体が動いている証拠に、「右親指の皮がむけそうだった」と4回途中には治療のためにベンチへ戻ったほどだ。「プレートに足がよくかかっている状態」だからこそのアクシデント。メジャーで球宴出場経験があるテンプルトン監督は「メジャーのスカウトが契約を持ちかけて、どこかで投げてもおかしくない」と評価。毎年6~7月にはメジャー球団スカウトが視察し、選手に契約を持ちかける。アーマダは05年以降、計20選手をメジャーへ送り出した実績を持つ。それだけに伊良部のメジャー復帰は「十分可能性がある」と話した。

 スタンドは150人ほどの観客だったが、再びスポットライトを浴びる手応えはつかんだ。「だんだんなじんできているし、楽しい」とにこやかに話す姿には、かつて“悪童”と呼ばれた面影は消えていた。次回は13日(同14日)に本拠地ロングビーチで登板予定。第2の野球人生が幕を開け、どんなシナリオになるのか。目が離せなくなってきた。