<2002年9月24日付日刊スポーツ>

 【シアトル(米ワシントン州)22日(日本時間23日)=四竃衛】マリナーズのイチロー外野手(28)が、メジャー史上7人目、48年ぶりとなる新人王有資格年から2年連続の200本安打を達成した。198安打で臨んだエンゼルス戦で、1回裏に左中間二塁打を放ち王手。7回の第4打席にエ軍の左腕エース、ワシュバーンから左前安打を放ち、大台に到達した。試合後は「大きな価値を持つもの」と喜びを表現した。試合はマ軍が3-2で連勝し、プレーオフ進出にかすかな可能性を残した。

 一塁ベース上で、いつものように顔色ひとつ変えずに、右ヒジのレガーズを外した。だが、イチローの胸の中には、久しぶりに充足感が広がっていた。4月1日の開幕戦、第1打席で左前打を放って以来、積み重ねてきた数字は、ついに「200」に到達した。

 イチロー

 200本というのは、得点(100)と2つ、ボクが数字で挙げられるもののひとつ。よく機会があるものではないですからね。ボクの中では大きな価値を持つもの。こうやってクールを装ってはいますけど、自分の中ではすごくうれしいです。

 あと「2」で迎えた156試合目。初回、18勝左腕ワシュバーンから左中間二塁打を放った。迎えた第4打席。初球、外角へ流れるスライダーに逆らわず、左前へ運んだ。左打者が左腕投手に対するうえで、お手本ともいえる打撃で大台に乗せた。

 昨季とは、周囲が受ける印象は違うのかもしれない。打率は約3分低く到達ペースも24試合遅い。過去6人しか成し遂げていない偉業。2年目となれば、相手を知ったプラスもあれば、相手に研究されるマイナスもある。四球は昨年の倍以上の67(うち26敬遠)。ストライクで勝負されないジレンマとも闘ってきた。出塁率は昨年を上回った。

 イチロー

 シーズン前には1試合で1本、162試合で162本、それプラスというように考えています。そういう状態でないと、逆に自分を苦しめることになりかねないですから。健康な状態とか、いろいろな要素もあります。自己管理の癖を付けることが大事ですが、幸いにもボクの場合は付いてますから。ボール球勝負?

 これまでも経験してますし、日本でもイヤというほどありましたから、それは慣れてました。

 昨年、200本に到達した時は「チーム(の勢い)に乗せられた」と言った。今年は終始ストレスがたまりがちな1年だった。

 イチロー

 後半はチームによってモチベーションが上がるということはなかったかもしれませんが、元々自分にモチベーションはある。チームを引っ張る気持ち?

 そんなに大きくはないですが、小さくもない。ただ、あり過ぎても違うものにしてしまいますからね。いろいろなプレッシャーの中で試合をしていくことが、自分の肥やしになる。成長しているという実感が持てます。

 それでも、言った。

 イチロー

 安打?

 いつだって難しいと感じてます。それに変わりはないです。

 卓越した技術、そしてかたくななまでに「自分自身」を保ちながらも、イチローは進化することをやめようとしない。

 ▼イチローが2年連続200安打を達成した。新人王有資格年からの2年連続200安打は、48年ぶりで史上7人目。2年間での安打数は伝説のJ・ジャクソンの459安打がトップだが、ジャクソンはメジャー4年目、5年目の数字。1年目から2年間の最多安打はL・ウェイナー(パイレーツ)の444本でイチローはあと2安打で到達する。(2002年9月24日付日刊スポーツ紙面から)